- キノコの菌糸体を成長させ、代替タンパク質と肉の代替製品の製造に使う材料を開発
- 菌糸体ベースのタンパク質は「植物ベース代替肉の添加物」に対する1つの解決策になる
- 生産する菌糸体ベースのタンパク質の材料は、廃棄物扱いとなった「使用済み穀物やコーヒー、おがくず」
ゴミを材料に菌糸体ベースのタンパク質を開発※Webページからも音声はご視聴いただけます。
菌糸体からタンパク質を生産
ドイツ、ベルリンを拠点するMushlabsは液体発酵技術を使用して、キノコの菌糸体を成長させ、代替タンパク質と肉の代替製品の製造に使う材料を開発している。
開発している菌糸体ベースのタンパク質は、昨今問題になり始めている「植物ベースの添加物」に対する1つの解決策になる。
加えて、Mushlabsが生産する菌糸体ベースのタンパク質の材料は、農業食品産業から大量に出る廃棄物扱いとなった「使用済み穀物やコーヒー、お茶、おがくず」。
このアップサイクルの側面を持った「高度に循環するプロセス」とMushlabsは説明する。
2020年8月に1000万㌦(約10億円)の資金調達完了を発表。
シンガポールのVisVires New ProteinとスイスのRedalpineが主導したシリーズAに既存の投資団体のHappiness Capital、Joyance Partnersも参加している。
キノコ菌糸体で何ができる?
菌糸体はキノコの笠の部分(子実体)ではなくキノコの根の部分。糸状の形をしているため「菌糸体」と呼ばれる。
この菌糸体に十分な栄養が貯め込まれると、笠の部分が作り出される。そのため有用成分が多く含まれており、サプリメントなどに使用がされている。
また、持続可能性を追求した企業のなかには、この菌糸体を使い梱包材や家具、断熱材などの開発されており、その使い道の広さはさらに他分野になると期待されている。
フードテックの分野においては、キノコ菌糸体の使い道は「足場」、「代替たんぱく質」、「うま味成分」としての利用が期待されている。
特にキノコはもともとのグアニル酸、グルタミン酸、イノシン酸などを多く含むものとして、代替たんぱく質としては十分な栄養を持っている。
食用キノコ菌糸体は「肉の代替品」に向いている
Mushlabsは開発した代替たんぱく質は、バイオリアクターで菌糸体細胞が培地を発酵させて増殖する。
そして、タンパク質が豊富なバイオマスに成長していき、それを収穫。製品の主成分として使用する。
その高いタンパク質に加えて、成長したバイオマスはさまざまな微量栄養素と繊維を含み、それらのいくつかはプレバイオティクス特性を持っている。
これをMushlabsは「完全でバランスの取れた栄養」と呼んでいる。
プレバイオティクス特性
整腸作用(便通改善)、抗脂血作用、インスリン抵抗性の改善、ミネラル吸収促進作用、尿中窒素低減作用、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制作用、腸管免疫の増強等が報告されている。
またオリゴ糖類のプレバイオティクスの多くは難消化性糖質であることから低カロリーでもある。
この開発した菌糸体ベースのタンパクを材料に植物ベースの代替肉を作ると優れた食感と味が実現される。
これにより植物ベース代替肉の製品は味を良くするために、不健康の原因となる添加物に依存することなく、「肉」の再現が可能となる。
特に添加物の使用の多い代替タンパク質企業にとってより魅力的なものになる。
菌の苗床は食品加工業から出る廃棄物扱いの余りもの
同社のウェブサイトによると、菌糸体ベースのタンパク質の生産には農業食品産業からの副産物(サトウキビ、籾殻、使用済み穀物、コーヒーなど)を利用して生産している。
これはアップサイクルの要素も持ち合わせおり、「高度に循環するプロセス」と呼ばれている。
これは従来の食肉産業だけでなく、植物ベースのタンパク質で使用される農作物の栽培よりも、はるかに少ない水と少ないスペースで済むといわれている。
Mushlabsは、この持続可能な菌糸体の生産のために資金調達。企業向けに菌糸体ベースの代替たんぱく質を提供していく予定。
参 考
https://medium.com/@mushlabs/introducing-mushlabs-e603b5ed5ab
https://agfundernews.com/mushlabs-raises-10m-for-sustainable-alt-protein-derived-from-mycelia.html
https://thespoon.tech/mushlabs-raises-10m-to-scale-up-its-mushroom-fermentation-tech/