- 昆虫タンパクを食品に限定せず、サプリメント、ペットフード、家畜用飼料として使用を検討
- 2020年のバッタ大量発生のときに、鶏のエサとして集めた
- 大豆は45%がタンパク質、イナゴは70%タンパク質
昆虫タンパクは用途が広い
家畜に代わる肉として注目される代替タンパク質の1つ「昆虫タンパク質」。
イスラエルの科学と環境に関するメディア「ZAVIT」は昆虫タンパク質の使い道として食べ物という固定をせず、薬用や乳児用栄養に関わる分野で「サプリメント」としての使用を予測。

食べ物として固定すると消費者への正確な理解が進まないと指摘している。
世界初のイナゴのプロテインパウダーを生産するフードテック企業Hargolは、人が食べる食品以外にもペットフードや飼料としても使用を検討している。
持続可能性が高く、栄養豊富で、家畜よりはるかに効率が良いと高く評価される昆虫。

一方で「見た目」と馴染みのない食べ物ということで受け入れたくないというバイアスと直面している。
「食べ物」という枠組みを外したほうが、結果として昆虫タンパク質の普及が進む可能性は高い。
害虫から食品、サプリメント、飼料に
2020年にアフリカ、アジア、中東の20カ国以上でバッタが大量発生。農作物が被害を受け、食糧難、生活困窮した人が急増した。
出典:FAO
パキスタンでは、このバッタの大量発生のときに革新的なプログラムを試験的に実行。
それは「バッタを捕まえて、鶏にエサ」として与えるというもの。
このプログラムにバッタを集め、持ってきた人にバッタ1kg当たり20パキスタンルピー(約13円)を支払った。(500mlペットボトルのミネラルウォーターが20パキスタンルピー)

3日間のプログラムの間に1夜で7tのバッタが集まったといわれ、集まったバッタは鶏のエサとして飼料工場に販売された。
バッタのタンパク質の量は大豆を超える
「大豆」は45%がたんぱく質だが、イナゴは70%がたんぱく質。そして、大豆を手に入れるためには大豆を育てるか、仕入れるコストがかかる。

しかし、イナゴは自然発生するのを取ってくるだけで無料。
費用として発生するのは採取する労働力とイナゴを乾燥させる手間のみ。
コロナ大流行ということもあり、さらなる実験は見送りとなったが、家畜の飼料という使い道は害虫を有効な資源として利用できることを証明している。
日本の大豆の自給率は7%、残りの93%は輸入となっている。
主な調達先はアメリカ(232万t)、ブラジル(56万t)、カナダ(33万t)から輸入している(2018年)。

そして、この大豆の一部は飼料として使用される。
パキスタンのプログラムをそのまま日本で真似ることはできないが、参考にすべき点は多くある。
害虫扱いとなっている虫を集め、飼料として利用することで、農作物に対しても農薬を控えることが可能。
害虫が飼料として買い取りの対象となれば、その扱いも変わる。
イスラエル企業でコーシャ認証を持つHargol
ユダヤ教の教えに沿った食べ物であることの証明コーシャ認証されているHargol。
Hargolが生産するイナゴのプロテインパウダーには飽和脂肪とコレステロールがゼロの必須アミノ酸を含むタンパク質が70%以上含まれる。
出典:https://hargol.com/
飼育は、牛より最大20倍効率的、温室効果ガス排出量98.8%削減、水の消費量を1000分の1に減らし、必要な耕作地を1500分の1に減らし、廃棄物をほぼゼロという。
従来は水耕栽培で育てた無農薬のウィートグラス(小麦若葉)をイナゴの飼料としていたが、乾燥飼料で飼育可能な第5世代のイナゴが飼育できるようになったとコメントしている。
飼料コストが削減でき、メンテンナスが半分の労力で済むということ。
ペットフードにイナゴプロテインを
昆虫食に対して「受け入れたくない」というバイアスと直面しているHargolは、その使用用途をペットフードの健康食品として提供を開始している。

人が食べるものでないため、しばしばペットフードは原材料に質の悪いものが使われていると話題になる。
それを栄養、たんぱく質が豊富なイナゴプロテインのペットフードに置き換えることを狙っている。
そして、Hargolは家畜飼料用のイナゴの生産を検討し、以下のようなコメントをしている。
私たちは、栄養素を供給するだけでなく、高品質のイナゴベースの飼料の開発に協力するこの業界の戦略的パートナーを探しています。動物だけでなく、幅広い健康上のメリットを提供します。
規制とバイアスの昆虫タンパク質
昆虫タンパク質を食品の材料に使用するのは、基準がまだ不十分となっていることと、消費者のバイアスで時間が必要になる。

しかし、家畜用飼料やペットフードとしての使用は、すぐにでも始めて一定の成果が期待できる。
なによりも昆虫の生産に必要なコストの低さが魅力的である。
イナゴに限らず、ミルワームやコオロギのエサを用意するのは穀物を栽培するより、短期間に省資源でできる。
特にミルワームやコオロギを家畜用飼料として大量生産する場合、そのエサは生ごみでも問題はない。

一般家庭や飲食業界からの協力で生ごみだけを一定量集めることができる仕組みが確立したら、餌代は事実上ゼロになる。
そうなると昆虫を使った家畜飼料はアップサイクル製品にもなる。
家畜飼料の一部に昆虫を使うことで、持続可能性が低いとされる評価を改めるものになるかもれない。
参 考
企業HP
メディア情報
https://www.zavit.org.il/intl/en/health-nutrition/sustainable-protein-is-leaping-forward/
統計データ・調査データ
資金調達の流れ
https://www.crunchbase.com/organization/steak-tzartzar/signals_and_news