代替たんぱく質

分子レベルでは同一、精密発酵企業Clara Foodsが開発するチキンフリーの代替卵

  • 植物ベースの代替卵は再現できる料理は限定されていて、代替品として不十分
  • 遺伝子操作した酵母菌発酵を利用して、代替卵タンパク質を開発
  • 市場に出す製品はドリンクサプリ代替卵の複数である可能性

植物ベースの代替卵では機能が足りない

鶏卵の代わりとして「植物ベースの代替卵」がアメリカ、ヨーロッパで販売されていますが、再現できる料理は限定されています。

代替卵の料理出典:https://www.ju.st/

これが今の「植物ベースの代替卵」に対して不十分なところと言われています。オムレツやスクランブルエッグは作れるがシフォンケーキは焼けない。プリン茶わん蒸しも作れない。こうなると卵の代わりとしては不十分です。

 

サンフランシスコのスタートアップ企業Clara Foods(クララフーズ)は、鶏を必要とせずに分子的に同一の卵を開発。2021年1月14日に800万ドルのベンチャーローンを確保したと発表しました。

新しい資金で鶏含まない「チキンフリー」の卵を市場に出すため、精密発酵を技術を使って味、食感、機能性、栄養が従来の鶏卵に匹敵する卵タンパク質を生産するプラットフォーム構築予定ということです。

カルボナーラー

卵がないと一部の料理は作るのが非常に難しい

卵なしでプリン、ケーキ、マヨネーズ、アイスクリーム、パンなど作るのは難しく、料理で卵の存在は極めて大きい。

アメリカのJUST、イスラエルのZeroEgg、イギリスのPlantHeadOggs 、インドのEvoFoodsなど植物の代替卵は開発、販売はされています。しかし、その製品は「卵の代わり」としてはかなり限定された機能しか再現できていないのが実情です。

EGG Basics出典:https://www.zeroeggfood.com/
BAKE Basics出典:https://www.zeroeggfood.com/

イスラエルZeroEggEGG Basics(オムレツや卵焼きが作れるBAKE Basics(ケーキやマフィンの材料という2種類の商品に分けで、卵の機能を再現するという方法を取っています。

それでも卵の機能を全て再現はできていません。

卵には油と水を分離させない乳化性、熱を加えると固まる凝固性、卵白を泡立てるとメレンゲとなる起泡性、黄身の色を混ぜた食材に移す着色性、生地膨らます膨張性など数々の機能があります。

卵の機能

これらの機能を「植物ベースの代替卵」に求めるのは、動物性植物性の違いから難しいと言われています。

それを精密発酵技術で実現しようとしているClara Foodsの挑戦は、成し遂げたなら「偉業」といえるでしょう。

 

実は日本は卵を大量消費する国として世界2位です。日本人1人当たり年間337個の卵を消費。

世界で最も卵を消費しているメキシコの372個、その次に卵を消費する国です。3位がロシア306個となっており、代替卵に対する期待と需要はかなり大きいといって良いでしょう。

卵消費世界2位

精密発酵から作る卵

Clara Foods(クララフーズ)はサンフランシスコを拠点にArturo ElizondoDavid Anchelの2人よって2015年に設立。

遺伝子を操作した酵母菌を使い、代替卵タンパク質を開発していることをメディアgreen queen」に説明しています。

その内容によれば、材料となるものは「砂糖」。それを遺伝子操作した酵母菌に与え、卵の代替たんぱく質を作らせるということです。遺伝子を改良した酵母菌と聞くと驚くところがありますが、現在では一般的な方法となっています。

精密発酵出典:https://www.clarafoods.com/

 Impossible Foodsの植物ベースのパティやチーズを製造の過程で使用するレンネットなどに同じ方法が使用されています。

創設者のArturo Elizondoも、この「再設計された細菌の技術」についてコメントをしています。

主な誤解の1つは、私たちのテクノロジーに関するものです。鶏を使わずに卵を作ると、おかしなことに聞こえると思います。しかし、このテクノロジーは40年前から存在しており、それは私が話すすべての人にとって目を見張るものです。

 

Clara Foodsはこの作り出されたタンパク質から、複数の製品を作り出すことを2020年にメディア「FOODDIVE」に語っています。

それによると、最初に代替卵タンパク質の成分のプロテインドリンクやサプリメント。その後に焼き菓子やスクランブルエッグに使う製品の代替卵を発売するということです。

製品の発売時期などについてはまだ触れられていないですが、今回の800万ドルのベンチャーローンは製品発売が近いと考えることができるのではないでしょうか。

 

代替卵を開発する企業は少ない=ライバルも少ない

もしClaraFoods(クララフーズ)が機能性や栄養面など鶏卵と同様の「チキンフリーの代替卵」の開発に成功したら、その影響力と商品価値は巨大です。

細菌発酵技術を駆使して、牛を使わずに乳タンパク質を作成したPerfectdayと同様に一気に世界の市場から求められるでしょう。

パーフェクトデイ出典:https://perfectdayfoods.com/

代替肉とは違い、先行しているスタートアップ企業が少なく、流通している植物ベースの代替卵は機能が不十分。そこでClara Foodsの「チキンフリーの代替卵」が大きく流れを変える可能性を持っています。

世界の鶏卵市場を変えるほどの可能性があるといっても良いでしょう。

養鶏場

投資や最新技術を扱うメディア「nanalyze」ではClara Foodsが「世界の3億羽の鶏を失業させるために発酵技術を開発している」とユーモアのあるコメントしています。

参 考 

https://www.clarafoods.com/

https://www.greenqueen.com.hk/clara-foods-secures-us8m-venture-loan-to-bring-animal-free-eggs-to-market/

https://www.greenqueen.com.hk/interview-clara-foods-founder-ceo-arturo-elizondo-eggs-without-chicken/

https://ir.horizontechfinance.com/news-releases/news-release-details/horizon-technology-finance-provides-8-million-venture-loan-0

https://horizontechfinance.com/

https://www.crunchbase.com/organization/clara-foods/signals_and_news

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Junichi
新しい「食に関する常識」フードテックをわかりやすく要約記事にして配信。twitterで箇条書きで配信 取扱うジャンル: ゴーストキッチン・代替タンパク・キッチンロボなど 経歴: 大手二輪中古販売店でバイク整備士▶︎ANAの傘下の国際物流部門で貿易業務▶︎日本橋で寿司職人▶︎カナダで海運業務▶︎外資系倉庫型小売店▶︎2021年Webライター