- 植物ベースの代替卵は、鶏卵の機能を全て再現したものはない(2021年の段階)
- レポートは、新しく植物ベースの代替卵開発と卵の代替品を料理や食品に取り入れるのに役立つように作成された
GFIから公開されたレポート概要
アメリカ非営利団体The Good Food Institute(GFI)より、2018年に公開された代替卵に関するレポート「Plant-based egg alternatives:Optimizing for functional properties and applications(プラントベース代替卵の機能特性とアプリケーションの最適化)」。
代替卵の現状とレポートの趣旨
市場に鶏卵の代替品の販売はされています。
しかし、卵の完全な機能性と感覚的な体験を再現するプラントベース(植物ベース)製品は、流通していません。
レポートの内容は、新しくプラントベース代替卵の開発と卵の代替品を料理や食品に取り入れるのに役立つように作成されたものです。
要約したレポートの注意点
こちらのレポートを要約内容について注意していただきたいことがあります。
GFIによってまとめられたレポートが最初に公開されたのは3年前。
レポートに記載してある内容がすでに古くなっていると当初は思ったものの…2021年1月28日、改めてGFIより代替卵に関してのレポートの公開がされました。
2018年に公開されたレポート、今年公開されたものを比べた結果…中身はほぼ同じ。という結論に至りました。
なので、注意点は2021年に公開された最新の代替卵関するレポートですが…2018年に作成されたものであるということです。
世界の代替卵の見通し
世界のプラントベース(植物ベース)代替卵の原料市場は、2016年~2026年の10年のうちに5.8%で成長し、2026年末までに15億㌦(約1600億円)を超えると予測。
プラントベース代替卵は、他の代替タンパク質製品(植物肉や代替チーズなど)と比べると、消費者立場からはビミョーです。
その理由は鶏卵の機能性の再現の不十分なところにあります。しかし、食品メーカーによっては導入を推進。
特に最近の鳥インフルエンザの発生によって引き起こされた「価格の変動性」と「サプライチェーンの不安定化」に対する懸念が導入の理由となっています。
そのため、加工食品で卵を使う製品は、卵の代替品に入れ替える動きが進んでいます。
プラントベース代替卵は、消費者と企業側に両方にメリットを提供しますが、お互いのメリットは異なっています。
植物ベースの代替卵に切り替える理由
消費者側のニーズ
広がる植物中心の食生活に興味
プラントベース食品に対する消費者の需要は、2017年アメリカの売上高だけで31億ドル、年成長率は8.1%。
アメリカ人全体の39%が、プラントベース食品を食事に取り入れようとしている。
そのため、鶏卵をプラントベースの代替卵に置き換えると、食品メーカーにとって消費者のニーズに合わせることにもなります。
加えて、一般的にプラントベース食品は、健康に対して良い効果と持続可能性があるとされています。
栄養と健康
一般的にコレステロールを含まないプラントベース製品とは異なり、卵はコレステロールを豊富に含んだ食べ物です(卵50g当たり210mlのコレステロールを含む)。
コレステロールの摂取量に制限がある特定のグループの人々にとっては、食事中のコレステロールの摂取量への懸念があります。
数値引用:くにちか内科クリニック
食物アレルギー
消費者が代替卵を求める最も大きな理由は食物アレルギーです。卵アレルギーの体質の幼児は0.5〜2.5%(推定)。その症状は軽度の発疹からアナフィラキシーまでさまざまです。
加えて、家族のなかで1人でも食物アレルギーを持っている場合、家族全員が卵を制限された食事になるのが一般的です。
食品安全
卵にはサルモネラ菌に感染するリスクがあります。
これは卵の殻が形成される前に、卵が菌に感染。アメリカでは年間で推定100万件以上の食中毒が発生しているとされます。
当然、養鶏場では抗生物質を使い、菌へ対処をします。しかし、抗生物質に耐性をもつ、抗生物質耐性菌の発生があり、卵の菌感染のリスクは常に一定以上あります。
※日本は世界でも鶏卵を「生」で食べる珍しい習慣を持っている国です。
取扱い及び保管(消費者、食品メーカー)
液体卵製品は、食品業界で一般的に使用されていますが、腐りやすく、貯蔵寿命が短いため、容器を開けたら、すぐに使いきる必要があります。 加えて、液体卵は冷蔵で保存する必要があり、冷蔵設備が必要。
これを粉末や常温保存可能な液体代替卵に置き換えることで、生産工程での作業負担の軽減が期待できます。
一般家庭でも、鶏卵は他の食品よりデリケートに扱う必要があり、貯蔵寿命の短い冷蔵品です。
それを長期保存可能な粉末代替卵に入れ替えることは家事の負担軽減と繋がります。
食品メーカーが代替卵を取り入れる動機
アレルギー成分の分離と洗浄
アレルギー成分を含む製品は、含まない製品と相互接触を防ぐために他の製品から分離する必要があります。
これを実際の製造工程に取り入れる場合、現実的に食品メーカーにとって無理難題の場合があります。
生産工程とスケジュールをさらに複雑にし、製造設備の厳格な洗浄とアレルゲンテスト、その作業で今まで通りの生産できない可能性があります。さらに倉庫保管も複雑化します。
そのため、製品の原材料に卵を使っている食品メーカーが代替卵を導入すると、特定の消費者が気にする「卵使用」という心配ごとが減ることを意味します。
このことは「消費者」と「食品メーカー」の両者にとって、代替卵を推進する重要な動機です。
特に加工食品で卵が含まれることを気にする消費者はいますが、逆に原料として卵が含まれていることを求める消費者はいません。
価格と市場のニーズ
鶏卵の価格は、貯蔵寿命と在庫に限度がある以上変動します。特に季節的な影響や年間行事による需要の変化で価格が大きく変化します。
加えて、最近は鳥インフルエンザの発生によって価格の急激高騰しており、企業側が価格の変化を無視できないものとなっています。
2014年~2015年の間で流行した鳥インフルエンザで最終的に卵価格は36%上昇。
さらに今後は、養鶏場の飼育環境の改善、オーガニック鶏卵など、より高単価な鶏卵が中心になっていくと予測。
そのため、価格の変動と不確実性から食品メーカーの多くが代替卵の使用を検討しています。
製品の機能、特性強化
一部の代替卵は、卵よりも優れた機能を持っています。
例えば結合、乳化、泡の安定化や風味の向上は、代替卵のほうが優れており、ベーカリーや菓子の材料として有用である可能性があります。
持続可能性
現在、アメリカの鶏の産卵管理は、ケージ飼いがほとんどです。この方法は水と飼料の使用量が多く、廃棄物の排出量も多い。
アメリカのコーンベルト(中西部:アイオワ州、イリノイ州、ネブラスカ州など)では、世界で最も高い生産性の農地あり、そこで栽培された穀物は動物の飼料になっています。
毎年約700万トンの穀物が産卵鶏によって消費。工業化された養鶏経営では動物の排泄物を集中させます。
1トンの鶏卵のために、それを生む鶏は数トンの糞尿を排出。
この排泄物からのアンモニア放出は、農場の衛生環境と安全の懸念があります。
また、肥料として使用される排泄物の水質汚染は、アメリカ中の小川や海洋における生物多様性の損失の主な原因となっています。
このような鶏卵の実態から、企業は個別に持続可能性の指標を設定。代替卵を導入することで持続可能性の貢献と好印象を獲得可能です。
卵の機能特性と感覚特性
卵を食品の材料にすると、多くの機能と特性を食品に与えることができます。
これを機能的、感覚的、栄養的と3つの特性に分けてカテゴリー。
食品によっては、複数の機能が食品の特性を作りあげていることもあり、ここでは個別に1つずつ概略を説明しています。
機能特性
乳 化
乳化は水と油に同時に結合でき、油と水の混合物(マヨネーズ)の作成、また分離するのを防ぐために機能します。
この特性は卵黄に含まれるリン脂質レシチン、コレステロールでもあり、乳化剤としても機能します。
それ以外に卵白のアルブミンタンパク質も乳化剤として機能する化合物が自然に含まれています。
凝 固
卵の凝固は、タンパク構造の3次元構造が展開するときに発生。
展開プロセスは変性と呼ばれ、熱、酸、塩、アルコール、または卵を叩くなどの機械的な力によって引き起こされます。
卵には40種類以上のタンパク質があり、変性すると、これらのタンパク質は互いに結合し、卵は凝固。
この不可逆的なプロセスにより、卵は液体から半固体または固体状態に変化。
この特性を利用して、凝固途中に追加された他の食品を包み込み、結合させ、オムレツなどの製品を作成できます。
ゲル化
食品用ゲルは粘弾性が特徴で、多糖類またはタンパク質から作ることができます。
卵のタンパク質でゲルを形成すると、カスタードなどの特定の食品に独特のテクスチャーと構造(タンパク質と水の3次元ネットワーク)を形成。
ゲル化させるためには、凝固と同様に熱などが加える必要性があります。
しかし、凝固とは異なり、ゲル化した場合、追加の水分や油を取り込むことで、より滑らかなテクスチャー作ることが可能です。
ゲル化の粘度は、変性の程度(どれくらい熱を加えるかなど)とタンパク質濃度に依存で変化します。
増 粘
凝固により、生卵は液体から半固体または固体に変化。この特性はプリンやソースなどさまざまな製品の増粘剤として利用可能。
バインディング(接着:凝固とゲル化による影響)
卵は他の材料を一緒に結合または接着します。これは卵子の凝固とゲル化による影響です。
用途としては、小麦粉と小麦粉の結合。例えば、ハンバーグなどの肉製品「つなぎ」やさまざまなベーカリー製品にバインディングが利用されます。
保 湿
保湿は水分を保持する特性であり、卵白と卵黄タンパク質の水分結合能力は、保湿剤として機能します。
水分保持は、劣化を遅らせ、貯蔵寿命を延ばすために不可欠。特にこの特性はベーカリー製品で役に立ちます。
泡の安定化
メレンゲやヌガーを作るときには、卵白タンパク質(オバルブミンとオボムチン)が泡の安定化をさせます。
泡立てなどの機械的攪拌で泡を作り、それを他の食品と混ぜると、混ぜた食品のなかに空気を取り込ます。
ここに熱などを加えて、卵タンパク質を変性させて互いに結合させ、内部に気泡を閉じ込めます。
ベーカリー製品では、この泡の安定化が膨張剤として機能させます。シフォンケーキやスポンジケーキでは、卵白のタンパク質がこの役割を担っています。
卵タンパク質が小麦タンパク質(グルテン)と結合して、加熱中に膨張。閉じ込められた気泡が弾力性のあるネットワークを形成。
このタンパク質ネットワークは、ベーカリー製品が冷却されたときにその高さと形状を維持します。
結晶化制御
一部の食品成分は、特定の条件下で結晶化する傾向があります。
菓子に含まれる溶存糖(溶けている砂糖)。この糖分は温度と湿度の変化で、保管中に再結晶する場合があります(チョコレート冷凍すると、表面が白くなる)。
この変化により、白い表面部分は、ざらざらした口当たりが生じ、製品の品質と貯蔵寿命が低下させる場合があります。
卵には、その結晶化を遅らせたり、防止したりするための干渉剤として機能します。
結晶化制御は、ファッジ、トリュフ、ヌガー、フォンダンで有効です。
同様に、卵の冷凍食品の流通および保管中に発生する凍結融解サイクル中(溶けて、また凍る)に冷凍食品の氷の結晶化を制御できます。
冷凍食品は、僅かな温度変化で解凍と再冷凍を繰り返します。その後、氷の結晶が非常に大きくなり、製品の質感が劣化させる場合あり、卵は結晶成長を最小限に抑える働きをします。
具体的には、アイスクリームのような製品で、クリーミーな口当たりを維持するのに機能しています。
抗菌剤
特定の卵白タンパク質(卵白リゾチーム)には抗菌特性があり、生体防御物質として機能します。
商業的には、チーズおよびワイン製造で有用。
鶏卵が市販のリゾチームの主要な供給源ですが、合成リゾチームも存在します。
感覚特性
口当たり(マウスフィール)
卵の機能特性として、乳化と増粘の効果として口当たりを変化させます。代表的なものは、マヨネーズや卵ソースなどのクリーミーな口当たり。
似たようなものとしては、カスタードがありますが、その場合はゲル化が口当たりを作っています。
ゲル化の強さによって、口当たりは変化し、ある程度コンロールが可能。
フレーバーとアロマ(風味と香り)
卵には少なくとも115種類のフレーバーが確認されています。
卵白に含まれる硫黄を含有するアミノ酸(システインとメチオニン)が、特徴的なわずかな硫黄の匂いをつくっています。(硫黄のにおいが卵の腐った匂いといわれる原因)。
卵黄にも他の食品に影響を与える脂肪が含まれ、特に高温のベーキングで独特の香りを作りだします。
着 色
卵黄の黄色は、カロテノイド(主にキサントフィルに由来)。
鶏はカロテノイドを合成できないため、卵に含まれる色はエサに含まれるもので色は変化します。
消費者が好む色にするため、飼料にマリーゴールドやパプリカの抽出物をまぜて、卵黄の色に変化を加える。
卵黄のカロテノイドには、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、シトラナキサンチン、アポカロチンエステル、およびクリプトキサンチンが含まれる。
洗浄(ろ過)
卵のタンパク質は凝固するため、ブイヨン、ワインなどの清澄(セイチョウ)に使用されます。
熱を加えるブイヨンの場合、凝固した卵のタンパク質が細かな粒子を捉え、浮き上がり、それをすくい取ることで透きとおったスープができます。
ワインの場合は、過剰なタンニンと結合し、時間とかけて樽の底に沈殿。
タンニンの減少によって、渋みと苦みが減り、風味の良い、きれいな透きとおったワインとなります。
参考記事:ワインの卵白清澄(ランパクセイチョウ)
褐色化
卵のタンパク質は加熱で、メイラード反応を起こし褐色化。
この特性を利用して、焼き菓子の見た目で大切な「焦げ目」をつける。
加えて、メイラード反応のときに、香りを作りだし、焼き菓子の味をより特徴的にします。
光 沢
ロールパンを焼くときに、パンの表面に卵黄を塗ります。すると、焼き上がりに卵黄の脂肪分が光沢をつくり、ロールパンの表面を仕上げます。
同じようにして、アップルパイやプレッツェルなどにも利用され、褐色化と組み合わさり、卵黄はベーキング製品に金色、光沢のある茶褐色の見た目をつくります。
栄養特性
タンパク質強化
卵1つには約12.5%(約6g)のプロテインが含まれ、他の食品に混ぜることで含有タンパク質強化につながる。
液体の状態ではなく、乾燥全卵であるとそのタンパク質の割合は増加し、約48%。
乾燥卵白の場合は、さらに増えて81%となる。
代替卵製品の異なる機能
植物ベース代替卵
以下要約中…
代替卵の原料
主な製品と製品の再現した機能性
結 論
参 考
メディア情報
https://gfi.org/images/uploads/2018/06/Plantbasedeggalternatives.pdf
https://gfi.org/site-search/?_site_search=Plant-based%20egg&_sort=date_desc