イギリス初の植物ベース代替卵「No-EggEgg」
2021年5月26日、海外メディア「green queen」は、2020年11月の販売以降「No-EggEgg」の流通量が増加しており、国際市場に向けた動きをしていると報じました。
「No-EggEgg」は、イギリスの初の植物ベースの代替卵だり、他社製品とは異なる特徴を持った製品として高く評価されています。
製品の完成度は、JUST社の「JUST Egg」を超えているといわれるほどです。
代替肉は世界的に認知が広がっているが…
コロナ大流行をきっかけに広まったと言われるフレキシタリアンシフト(植物ベース製品を食生活の中心にする)。
2021年5月24日、メディア「Newsweek」はドイツ人の食生活が変わり、世界一のヴィーガン大国になりつつあると記事で取り上げました。
そのなかでも肉の代替品の生産が39%増し(前年比)。
2019年は60,400tだったのが、2020年は83,700トン以上になったとしています。
ドイツだけでなく、2020年は世界中で豆のタンパク質(大豆、エンドウ豆、緑豆、ひよこ豆など)を材料にした代替肉(植物肉・プラントミート)を開発、販売するスタートアップ企業、大手企業が急激に増えて、代替肉の認知を広げ、売上げをアップさせました。
その一方で植物ベースの代替卵を開発、販売する企業は数が少ないと言われています。
代替卵の開発の難しさ
植物ベースの代替肉(植物肉)より、製品もスタートアップの数も少ないとされる代替卵市場。
理由は多数の機能を従来の鶏卵は持っていて、それを単一の製品で再現するのは困難とされるからです。
鶏卵の持つ機能
例えば素材を固める熱凝固性(クッキー・プリン)、素材を膨らませる膨張性(シフォンケーキ・スポンジケーキ)、コクを出す乳化作用(ブラウニー・マヨネーズ・アイスクリーム)などの複数の機能を卵は備えています。
これらの機能を1つの製品で再現した製品はまだありません。
先行する代替卵製品「JUST Egg」
それでも植物ベースの代替卵といえば、世界的なシェアを拡大中のJUST社「JUST Egg」。
アメリカ市場で広く普及し、中国、ヨーロッパとシェアを拡大しており、「No-EggEgg」より先行するポジションにいる代替卵製品です。
イギリスでNo-EggEggの流通量が拡大
2021年5月26日にメディア「green queen」は、「No-EggEgg」がイギリス国内の流通量を増やし、今年の夏にイギリス大手スーパーマーケットチェーン店モリソン(Morrisons)を含めた主要な小売りでさらに販売を拡大すると報じました。
さらに2021年6月中旬には3つのTVコマーシャルに登場するということです。
国内で十分な流通量を広げたあとに国際市場に参入すると予想がされています。
今後「No-EggEgg」が国際市場に参入したときに、「JUST Egg」と同じ市場でマーケット奪い合うかと言えば……それには疑問があります。
理由は「No-EggEgg」と「JUST Egg」では再現できている卵の機能が違うからです。
No-EggEggの概略
「No-EggEgg」を製造するスタートアップ企業Plant Headsはイギリス、ハートフォードシャーを拠点にしています。
同社はブランド名「Crackd」を立上げてイギリス初の植物ベースリキッド代替卵「No-EggEgg」を2020年11月から販売を開始。
最初はスーパーマーケットチェーン店M&Sとオンライン専門店The Vegas Kindから展開し、流通を広げました。
「No-EggEgg」が他の植物ベースの代替卵と違う点は、ベーキングができる点です。
国際市場で先行するJUST社の「JUST Egg」はオムレツやキッシュ、フリタータ、クレープ、クッキーをつくることはできるとJUST社のWebサイトでレシピが公開されています。
しかし、そのレシピのなかにスポンジケーキやパン、プリンなどは含まれていません。
つまり、「JUST Egg」は従来の鶏卵が備えている機能「泡の安定化」や「凝固」、「増粘」の再現ができていないことになります。
それを「No-EggEgg」は再現しており、CrackdのWebサイトではイギリス食パンやスポンジケーキ、プリンのレシピが公開されています。
そのため「No-EggEgg」の完成度は「JUST Egg」を超えていると評価されているようです。
No-EggEggの特徴
最初「No-EggEgg」の製品開発は「ベーキング用だった」とされています。
つまり当初は代替卵ではなく、卵不使用のスポンジケーキやパンを焼くための製品だったことになります。
従来の鶏卵は料理のなかで22の役割があり、植物ベースの代替卵は22の役割の一部しか再現できていないとされます。
再現できている機能が多い「No-EggEgg」は使い勝手が良い代替卵と言えるでしょう。
「No-EggEgg」が他の植物ベースの代替卵より卵の機能性の再現が高く。パンやスポンジケーキが焼け、プリン、カルボナーラ・スパゲティが作れるとレシピを公開中です。
使われている原材料
「No-EggEgg」の原料はコールドプレスされたエンドウ豆タンパクを使い、欧州食品安全機関が承認した植物素材のみを使用。
原材料
水、エンドウ豆プロテイン、増粘剤、ゲル化剤、ファーミング剤(ペクチンの代わり)、栄養酵母、ビタミンB12、香料、黒海塩、酸味料、ph調整剤、着色料、ビタミンD、ビタミンB12、安定剤、ブドウ糖
レシピ(バニラ・スポンジケーキ)
- No-EggEgg 120ml
- 小麦粉 350g
- グラニュー糖 160g
- ベーキングパウダー 小さじ1と½
- 植物性脂肪 150g
- 植物性ミルク 250ml
- リンゴ酢 大さじ1
- バニラ エッセンス 小さじ1(またはバニラの種子1 つ)
装飾用
- ビーガンダブルクリーム 100ml
- いちごジャム 大さじ4
- スライスしたイチゴ4個(オプション)
手順:
- オーブンを160℃・140℃で予熱します。
- 2 x 20㎝の丸いケーキ型に薄く油を塗り、底にベーキング シートを敷く。
- リンゴ酢を植物性ミルクに混ぜ、数分間置いて少し固める。
- ミルクにNo-EggEggとバニラを加え、泡だて器で泡立てる
- ボウルに砂糖と植物性脂肪を混ぜ合わせます
- 4で混ぜ合わせたミルクに5を混ぜて、電動ミキサーで滑らかになるまで泡立てる
- 小麦粉とベーキングパウダーを混ぜ合わせ、ふるいにかけ、6に加える
- 均等に混ざるように小麦粉を入れる。
- 準備した型に生地を分け、25 分間。(挿入した串に何も着かなくなるまで焼く)
- 焼き上がり後、型の中で 5 分間冷まし、網の上に焼きあがった生地を移し完全に冷ます。
- 真っすぐ水平に包丁を入れて、上下で飾り付けをして完成。
このほかにもヨークシャー・プディング(シュークリームの皮のようなカップケーキ)の動画や誕生日ケーキのレシピも公開されており、従来の鶏卵の持つ多数の機能性を「No-EggEgg」は再現できていることになります。
No-EggEggの値段
- 内容量:490g(ボトル1本あたり)……約8個分の鶏卵を同じ量
- 単 価:3.99ポンド(約540円)
「JUST Egg」が発売当初355mlで7.99ドル(約876円)、2020年10月に4.99ドル(約547円)に値段を引き下げました。
それでもNo-EggEggの使い勝手、内容量、値段を比較すると、No-EggEggが植物ベースの代替卵製品として優れていると言えるのではないでしょうか。
国際市場へ参入する動き
使い勝手が良いNo-EggEggが今後さらにイギリス国内で流通量を増やし、ヨーロッパ市場やアジア市場に参入したとき、使い勝手の良さでNo-EggEggは一般家庭に歓迎される可能性が高いと言えるでしょう。
一方でJUST Eggは用途がある程度決まっている飲食店やファストフードチェーンにオムレツやエッグマフィンの代替材料として流通を広げている様子。
2つの製品がそれぞれ市場ですみ分けができるのではないかと想像します。
とはいえ、インドで植物ベースの代替卵を開発しているEvoFoodsやシンガポールで白身と黄身が分かれている植物ベースの代替卵を開発したFloat Foodsなど他の国にスタートアップ企業も次々と製品化を進めているため、今後の展開は読めません。
日本は世界第2位の鶏卵消費国
求められる機能が多く、再現が難しいとされる植物ベースの代替卵。そのなかでも鶏卵の機能を多く再現できた「No-EggEgg」。
国際市場に参入後、日本への輸入がされるかは不確定ですが、1つの選択肢として輸入されてほしいと思います。
日本は世界で第2位に卵を消費し、珍しく卵の生食する文化を持つ国です。
代替卵に対しての要望の1つに「生食が可能か?」という項目が追加されるかもしれません。
イギリス初の植物ベースリキッド代替卵「No-EggEgg」では生食は想定されていないでしょう。しかし、プリンが作れるとなると、茶わん蒸しはできる可能性は高いと言えます。「植物ベースの代替卵で作った茶碗蒸し」……どうでしょうか?
参 考
企業HP
URL:ブランドCrackd
URL:JUST
メディア情報
メディア「The Spoon」:
Crackd to Launch Its Plant-Based Egg in the U.K.
メディア「greenqueen」
Plant-Based Pea Protein ‘No-Egg Egg’ Crackd To Launch At U.K. Retailers This December
British Vegan Egg Brand Crackd Expands Distribution & Gears Up For International Launch
メディア「VEGAN FOOD AND LIVING」
Crackd to launch liquid vegan egg substitute in the UK
メディア「JUST-FOOD」
Noble Foods-backed Plant Heads claims UK first with vegan egg NPD
メディア「Newsweek」
ソーセージにサヨナラ? ドイツが世界No.1ヴィーガン大国へ
統計データ・調査データ
URL:日本卵業協会
用語説明:
卵の役割 《起泡性・気泡の安定性・乳化作用・殻の色・選び方・メレンゲについて》
アイキャッチ画像出典: