それがゴーストキッチンで宅配専門の食品を販売する飲食店です。
ゴーストキッチンとは何か?
一言でいうと「料理をするだけの場所」。
メニューやオシャレなインテリア、テーブル、レジ、グッズを売っている棚など一切なし。
訪れるのはデリバリーの人だけ。注文した顧客はゴーストキッチンがどこにあるか知らない場合もあります。
そうやって説明してしまうと飲食店としての存在が疑いそうです。
しかし、ゴーストキッチンは飲食業に関わる人にとって、いわゆる店舗を構えて、「待つ」スタイルから、「攻め」のスタイルになれる飲食といえます。
コロナ大流行で、いわゆる3密を避けるということを社会的に意識するようになりました。
そして、飲食店で食事をするのではなく、持ち帰って食べるスタイルが人気となります。
この流れでデリバリー、特に日本ではUberEats(ウーバーイーツ)を使った宅配が広まりました。
今後もこのゴーストキッチンを使ったデリバリー市場は広がっていくことになるでしょう。
イギリスの市場調査企業Euromonitorは2030年までにゴーストキッチンの市場は地球規模で約1000億円になると予想しています。
仕組み
ゴーストキッチンを中心にした飲食店の注文を全てアプリから取ります。
- 一般消費者がデリバリーアプリ(UberEats・dデリバリー・出前館など)から注文
- 注文に合わせて料理を作る
- デリバリー業者へ配送準備完了の連絡
- デリバリー業者が料理の引き取る
という流れです。
支払いはアプリ上で完了するため、現金のやりとりはなく、レジや伝票なども要りません。
アメリカ・ヨーロッパ・中国はすでに多くのデリバリーアプリがあり、飲食店側では注文を集めるためにデリバリーアプリの数だけアカウントを作り、それぞれのアプリ用に端末を用意しないといけない事態となっています。
日本では?
2020年11月の時点では、国内はまだまだデリバリーアプリの数は少なく、デリバリーに特化した飲食店の数は多くありません。
大抵の場合は、既存の飲食店がデリバリー対応したという形なります。
ですが、ゴーストキッチンを使い、デリバリーに特化した飲食店は都市部では徐々に増えています。
「Pic&GO」http://www.picandgo.jp/
「肉のお弁当 壱虎」 www.ichitora.jp
「築地 千鶴屋」 www.chizuya.jp
「三河屋青果」 www.mikawayaseika.jp
一般の飲食店との違い
では、既存の飲食店との大きな違いはどこにあるのか?
一番に大きいのは開業コストと維持費の低さです。
立地を気にしなくてよい、客席を用意する必要がない、人員は調理員のみ、接客なし、というイイこと尽くしのようですが、大きな問題もあります。
課題
新規顧客の獲得に飲食店側に手段が少ないことです。
例えば…あなたがデリバリーアプリからランチを注文しようとする時を想像してください。
味もわからない、量もわからない、値段に対しての満足感も不明というデリバリーを気軽にポンと注文するのは…なかなかハードルが高くありませんか?
そうなると、味や量などが分かっている大手のデリバリーを選びやすくなります。
ブランドイメージの有無
自社ブランドイメージがない新規参入のゴーストキッチンは、同じアプリに登録している他社と差別化が必要となります。
簡単なのが、割引クーポンを出して、新規顧客の目を引くという手段ですが、差別化としてはあまり有効ではありません。
にUberEats、dデリバリーなどの有名デリバリーアプリは登録している飲食店の数も多いため、その中から注文をもらうのは厳しいというものです。
特にブランディング戦略でアプリに依存すると、ブランドイメージ(○○といえばこの店!)を作りにくいという大きなデメリットがあります。
ブランドイメージの形成のために飲食店側がオリジナルのアプリを作り、そこから注文を集めたりしています。
また、アプリ開発企業が複数のデリバリーアプリを一括管理するプラットフォームを開発しています。
先行している海外でも、顧客にダイレクトにアプローチできる手段を確立しないとゴーストキッチンを用いた飲食店は新規顧客の獲得が難しいということでしょう。
「攻め」の飲食店
ですが、デリバリー専門であるということは「料理の味」、「見た目」、「値段」が顧客の判断基準となるため、飲食店側はその3点に集中できるということです。
特にハイレベルの料理人を雇えるゴーストキッチンは、それだけで強みとなります。
「食べた人に感動を与える」という料理人の真骨頂を情報発信することで認知を獲得。
これがゴーストキッチンにできる「攻め」方法となります。
伝える内容は…
- ストーリー(食材の産地、栄養の高さ、希少性、料理の由来、料理人の背景)
- デザイン(料理の見た目とパッケージ)
この2つをインスタグラムなど使い、認知を広めてゆく。そこには料理に対する熱意が必要になります。
職人技を持つ料理人にはストーリーを持っている人が多くいます。
何十年というキャリアを持たないと話せない価値観や料理の話し、そういう価値ある情報を発信して顧客を「料理に惚れこませる」。
多くの飲食店はSNSを使った認知獲得の手段に多くのエネルギーを使いません。
しかし、ゴーストキッチンは提供するサービスが限定されているため、その集中ができます。
そういう「攻め」ができるのがゴーストキッチンの強みと言えるでしょう。
まとめ
料理を作ることの特化したゴーストキッチン。
デリバリーが基本であるため、費用が安く抑えられて、業務効率が良いというのが強み。
しかし、認知をされにくいため、通常の飲食店よりさらにブランドイメージ強烈に作る必要があります。
そのために飲食店側から進んで情報発信を行い、多くの人を「魅了する料理」を作るという妥協しないゴーストキッチンが伸びていくのでしょう。
参考
https://www.qsrmagazine.com/outside-insights/why-ghost-kitchens-need-have-soul-too
https://en.wikipedia.org/wiki/Ghost_kitchen
https://www.euromonitor.com/about-us-jp
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000045048.html
https://www.inshokuten.com/foodist/article/5617/
https://kaiten-portal.jp/biz/food/food-open/Ghost-Restaurant
https://dime.jp/genre/1007566/
https://note.com/syukyaku/n/ncd9f88b19674