- Clara Foodsが世界で初めてアニマルフリー・ペプシンを商業利用
- アニマルフリー・ペプシンは微生物発酵(細菌発酵)を利用して生産
- Clara Foodsが目指しているのは、鶏卵に代わる卵タンパク質のサプライヤー
ペプシン市場の大変革につながる
メディア「Food Ingredients First」はアメリカ、サンフランシスコを拠点のClara Foods(クララ)が世界で初めてアニマルフリー・ペプシンの商業利用での発売を発表。
従来のペプシンは生産を豚に依存している仕組みが大きく変化することになりそうです。

Clara Foodsが発売を開始したアニマルフリー・ペプシンは微生物発酵(細菌発酵)を利用して生産されており、Clara Foods独自の精密発酵技術を用いて生産されるペプシンは、動物由来のものと機能性は変わらず、動物を含まないためビーガン、コーシャ、ハラールへの対応、認証が可能ということです。
ペプシンとは
動物の胃で働くタンパク質分解酵素の1つ。この酵素は消化を助けるサプリメントやお菓子、胃の治療薬など医療品、食品に広く使用されている材料の1つです。

余談ですが、ペプシコーラの「ペプシ」は、この消化酵素ペプシンが名前の由来となっています。1894年、薬剤師ケイレブ・ブラッドハムが消化不良の治療薬として売り出した飲料がペプシコーラの起源(※現在のペプシコーラに消化酵素ペプシンは含まれていません)。

チキンフリーの卵タンパク質を開発
この細菌発酵ベースのペプシンはClara Foodsとっては単なる通過点です。
同社が目指しているチキンフリーの卵タンパク質の商品化であり、世界でチキンフリー卵タンパク質のサプライヤーになるという計画を進めています。
生産を豚に依存するペプシン
今、市場に流通しているペプシンの生産は豚に依存しています。それも1kgのペプシンを得るためには100頭以上の豚が必要になるほど、大量生産には不向きなものです。

ですが、使用用途が広く需要が高いため、世界のペプシン市場は年率10%前後で成長しており、その市場価格は3000万㌦と言われています。
その市場に動物に頼らず、動物性を含まないペプシンを流通させることで、より安定的に持続可能性に優れたものにClara Foodsはしようとしています。
発売を発表したのはClara Foodsですが、微生物発酵ベースのペプシンはClara Foodsから直接供給されるのではなく、提携しているIngredion(イングレディオン)から市場へ供給されます。
アニマルフリー・ペプシンは提携先から流通
Ingredion(イングレディオン)は植物ベース(プラントベース)のタンパク質、甘味料などを米、エンドウ豆、ジャガイモ、タピオカなどを材料にして独自の原材料を開発、提供するメーカー。
取引先は40カ国以上、60の産業に広がっており、他分野に製品を提供している世界大手。

2019年5月にClara Foodsと提携を発表しており、お互いの食品科学者が製品の専門知識を共有しています。
Clara Foodsで開発された独自のアニマルフリーのタンパク質を、Ingredionが抱える顧客、企業へ提供し、世界市場のシェアをリードして、獲得するのが両社の戦略です。
Clara Foodsは卵タンパク質のサプライヤー

まわり道をしているように見えますが、Clara Foodsが目指しているのは、鶏卵に代わる卵タンパク質のサプライヤーです。
メディア「TheSpoon」では、Clara Foodsが2021年後半に2つ目の製品としてプロテイン飲料市場に流通させる新しいプロテインを発売予定と告知しています。

この「新しいプロテイン」も卵タンパク質を開発するまでの1つの通り道に過ぎず、Clara Foodsが目指すところは、3つ目の製品になる「卵白に代わる代替品」。それがClara Foodsの主力製品となる予定です。
Clara Foodsの発酵技術は、目的のタンパク質を作るDNAに書き直し、動物の代わりにバイオリアクターと酵母を利用して製品を作りだすというものです。
同じ技術を利用して製造されるものに、プラントベースの代替肉に使用されているヘム、チーズを発酵させるときに使うレンネット、糖尿病患者向けのインシュリンなどがあげられます。

Clara Foods創設者のArturo Elizondoは、これらの技術は新しいものではなく40年前から存在していたということを、メディア「green queen」のインタヴューでコメント。最新の技術のようで、その製品開発は堅実なものといえるでしょう。
2028年までにClara Foodsは世界最大の卵タンパク質のサプライヤーになる計画を進めており、今回のアニマルフリー・ペプシンはその計画のための基礎一部として、活かされているでしょう。
参 考
企業HP
メディア情報
その他のリソース