- シンプルな材料を使い、ヌタウナギの粘液を参考した物質で製品を生産
- 肉の繊維構造を正確に真似る技術を開発して製品化、鶏肉だけでなく、魚肉や豚肉、牛肉にも応用可能
- シリーズAの資金調達で得た資金で生産力アップ(1時間の生産量を0.5トンにする)
シンプルな材料でプラントベースチキンを展開
エンドウ豆のタンパク質とエンドウ豆の繊維を使い、プラントベース代替鶏肉を製造しているスイスのスタートアップ企業Planted(プランテッド)。

添加物、抗生物質、調味料を一切使用せずに生産される健康的な代替鶏肉を作るスタートアップ企業の起源は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校。
研究からスピンアウトして4人の創設者から始まったPlanted。その製品開発を支える元となった研究は、今の製品とは縁遠い存在に思える「ヌタウナギの粘液」。

2021年3月8日、メディア「Tech Crunch」の発表ではPlantedは、シリーズAの資金調達で1700万スイスフラン(約20億円)を調達。
新しい製品として、planted.pulled(プルド)、planted.kebab(ケバブ)の2種類が追加、最初の製品planted.chicken(チキン)とplanted.chicken BBQを合わせて4種類の製品をラインナップしています。

新しい資金でPlantedはヨーロッパ以外の地域への進出機会も狙うとコメント。
製品開発の決め手はヌタウナギの粘液
Planted(プランテッド)はスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHチューリッヒ)からスピンアウトする形で、Lukas Böni、Pascal Bieri、Erich Windhab、Christoph Jenny(写真の左から)の4人によって2019年7月に設立されました。

Lukas BöniとErich Windhabの2人が研究していたのは、古代魚の1つ「ヌタウナギ」の粘液。
Lukas BöniはETHチューリッヒで食品科学を専攻。その後、Erich Windhab教授の食品プロセス工学研究所で「ヌタウナギの魅力的な分泌物」に関する博士号を取得したプロフェッショナルです。
このヌタウナギが分泌する粘液は、他の魚に襲われたときに分泌される身を守るための粘液。分泌された粘液は一瞬のうちにゲル化し、温度低い水中でも巨大な粘液の塊を形成します。
その成分は、ほとんどが水でわずか0.004%の分泌されたゲル化剤で形を作る。このゲル化した水の塊は長い糸のようなタンパク質によって形成されます。

この天然のヒドロゲルの構造を真似ることでゼラチンやおむつ、絆創膏、食品業界への転用が期待されています。
Lukas Böniはこの粘液の柔らかく繊維質の素材、それを模倣する方法について多くのことを知っているということです。
共同創設者のPascal Bieri氏はそのことについてコメントを述べています。
この驚くべき天然ヒドロゲルとLukas Böniの生体模倣アプローチは、今日の肉のような構造と、生体材料の観点から、それらを模倣し最終的に改善する方法についての理解に大きく貢献しています。
水と繊維とたんぱく質
Planted(プランテッド)の製品材料はとてもシンプルで、エンドウ豆のタンパク質、エンドウ豆の繊維、水、ひまわり油。
この少ない材料とヌタウナギの粘液を模倣した物質(ほぼ水)を使い、タンパク質と繊維で代替肉の形を作っています。
製品プロセスは化学物質を必要としない純粋な熱機械的なプロセスだとLukas Böniはメディアにコメント。
エンドウ豆タンパク質の粉を水と混ぜて生地にして、こねて調理。次に生地をダイに押し込み、タンパク質に鶏肉特有の繊維構造を正確に生地与える。
それはパスタを作るようなものという例え話をLukas Böni氏はしています。
「私たちは押出機と呼ばれる同様の機械を使用していますが、圧力と温度が異なります」。

エンドウ豆の生地に鶏肉の繊維構造を本物のように再現して作成。この生地が鶏の胸肉に似た質感の持つ大きなピースになります。
この技術を使用すると、タンパク質の繊維の長さを自由に調整できるため、代替鶏肉以外に、魚肉、豚肉、牛肉まで、さまざまな種類の動物の肉の繊維構造を模倣できると自社のWebサイトで掲載しています。
製品特徴
シンプルな材料から作られているエンドウ豆ベースの代替鶏肉。Planted(プランテッド)の最初の製品はplanted.chickenでした。
ですが、繊維質がしっかり再現されていても、脂肪、コラーゲン、他の動物性物質を含まないため、単純に鶏肉料理のレシピにplanted.chickenを鶏肉の代わりに入れることはできないそうです。
それでも、焼き料理や単純に鶏胸肉スライスするような簡単な料理では十分にplanted.chickenで置き換えることが可能。
製品ラインナップ
新しく追加されたplanted.pulled(プルド)、planted.kebab(ケバブ)とplanted.chicken(チキン)の3種類に加えて、ステーキの準備中。

クリーンラベル
製品は材料のエンドウ豆のタンパク質、エンドウ豆の繊維、水、ひまわり油は全て100%天然成分のみを使用、添加物、抗生物質、調味料は完全不使用。
自社のWebサイトでは、材料の少なさに関して、「添加物の長いリストなしで、美味しくて清潔な自然な製品を生産する」という表現をしています。

planted.pulled(プルド)成分
Planted(プランテッド)製品の流通
2019年では、製品はわずかなレストランや食料品店でしか流通されてなかったとメディア「Tech Crunch」では書かれています。
現在、スイス、ドイツで3,000以上の小売店、レストラン、フードサービスと提携して、シェアを広げています。
2021年1月末には、オーストリア全土の食料品チェーン:Sparで取り扱い開始をメディアが取り上げています。
ラウンドA資金調達
2021年3月のラウンドAの資金調達は、Vorwerk VenturesとBlue Horizon Venturesが共同で主導し、スイスのサッカープレーヤーであるYann Sommerと以前の投資家が参加。

新しい資金について創設者の1人Christoph Jennyは、研究開発のために技術スタッフ拡充、 生産能力を1時間あたり0.5トンに大幅に増産。
勢力拡大を目指して最初は近隣諸国。次にヨーロッパや海外の国際市場の需要の増加に対応することをコメントしています。
参 考
企業HP
https://en.eatplanted.com/science
https://spar-international.com/country/austria/
メディア情報
メディアThe Spoon
https://thespoon.tech/swiss-startup-planted-raises-18m-for-plant-based-meat-alternatives/
メディアTech Crunch
メディアETH zurich
https://ethz.ch/en/news-and-events/eth-news/news/2019/07/portrait-planted-lukas-boeni.html
メクラウナギの粘膜
https://ethz.ch/en/news-and-events/eth-news/news/2016/01/hagfish-slime-and-smile.html
その他のメディア