- 作りだされる植物ベースのプロテインパウダー「TBD」は85%がタンパク質
- 細菌発酵で利用される微生物は草食動物の腸内より発見されたもの
- 2022年初頭に、最初の製品(代替タンパク質のチーズ類)を市場に投入予定
細菌発酵で植物ベースのビーガンプロテインパウダーを開発
メディアThe Spoonが取り上げたアメリカ、デラウェア拠点のスタートアップ企業SuperBrewed Food(スーパーブリューフード)は、細菌発酵技術を用いてプロテインパウダー「TBD(ブランドネーム)」を開発。
「TBD」を主原料にして、モッツァレラチーズやチェダーのブロックチーズ、クリームチーズと同様の製品が生産可能なると創設者のBryan Tracey(ブライアン・トレーシー)はメディア「Food navigator-usa.com」に語っています。
ゆくゆくはビーガンチーズだけでなく、ミルク、ヨーグルトなどの生産を計画しており、2022年初めに最初の製品を市場に出すため、動いています。
「TBD」プロテインパウダーの生産に関わる細菌は「草食動物の腸」で発見されたということです(動物名、細菌名は非公開)。
遺伝子改良した酵母菌や温泉の細菌など様々な微生物の力を使い、代替タンパク質をつくるスタートアップ企業。そのなかに新たにユニークな細菌を使うスタートアップ企業として、今後SuperBrewed Foodは認知が広がるでしょう。
細菌発酵はこれから立ち上がる市場と技術
アメリカ非営利団体Good Food Institute(GFI)が呼称する「第3の柱」に位置する細菌発酵(微生物発酵)の代替タンパク質。
この分野で有名になって認知を広げているのはPerfect Day。遺伝子改良した酵母菌から分子的に同一の乳タンパク質の開発と生産に成功(フローラベースと呼ばれる)。
複数のアイスクリーム企業と提携を進め、原料としてフローラベースの乳タンパク質を提供しています。
他にはビルゲイツがTV番組「60 minutes」で取り上げたNature’s Fynd。
このスタートアップ企業はイエローストーン国立公園の地下温泉の細菌を利用して、必須アミノ酸を全て含んだタンパク質「Fy」を開発、生産。
2021年2月に最初の製品を販売(24時間で完売)。
細胞培養技術のように大きな話題を呼ぶことはまだ少ないですが、培養肉よりも早く市販化に成功しており、今後もその種類や製品が増えていくでしょう。
草食動物の体を大きさに焦点をあてた創設者
SuperBrewed Food(スーパーブリューフード)は、もともとの名称をWhite Dog Labsという名称で2012年に設立され、のちに名称をSuperBrewed Foodへ変更。
創設者のBryan Traceyは草食動物のゴリラなどが、なぜ植物だけで大きな体を持つことができるようになったのか原因を探り、その答えを草食動物の腸内から発見します。
草食動物には腸内に数千種類の細菌が生息しており、その細菌が植物を分解、草食動物にとって消化、吸収しやすい栄養素に変えてくれる仕組みを持っています。
この仕組みをSuperBrewed Foodは利用して、非公開の草食動物の腸から抽出された微生物を使い、代替タンパク質を作りだしました。
微生物には植物ベース糖を与え、増殖、成長を促します。その際に低コストの嫌気性環境(酸素が少ない状態)を使用してバクテリアを増殖させるということです。
そして、洗浄、分離、乾燥の工程を経て、プロテインパウダー「TBD」は作成されます。
この「TBD」の85%がタンパク質、さらにビタミンB12が多量含まれ、一日に必要な摂取量の25%が含まれているといいます。
しかも、Perfect Dayのような遺伝子を組み替えた細菌を使っていないため、非遺伝子組み換え製品としての扱いとなるそうです。
食品医薬品局合格証(GRAS)の取得のため、アメリカ食品医薬品局(FDA)に申請を予定していると創設者のBryan Tracey(ブライアン・トレーシー)はメディアにコメント。
SuperBrewed Foodは、すでに個人投資家から4500万㌦(約46億円)の資金を調達済み。ですが、市場へ製品投入するため、最初の資金調達の開始を予定しています。
同社は2022年初めには製品投入予定しており、製品は植物ベースのチーズ製品になるそうです。
2021年は細胞培養肉のスタートアップ企業から発表が続きますが、来年は細菌発酵のスタートアップ企業の製品販売のニュースが続くかもしれません。
参 考
企業HP
https://www.superbrewedfood.com/
メディア情報
メディア「The Spoon」
メディア「Food navigator-usa.com」