- 7日間で育てることができる代替たんぱく質「微細藻類ベースのパーフェクトプロテイン」
- 微細藻類ベースのタンパク質の使用用途は代替肉の開発の材料
- 持続可能性の高さは家畜や養殖業の魚、プラントベースのタンパク質を超える
7日間で代替タンパク質を作るフードテック企業「Small food」※Spotify、スタンドFM、Podcastsからも音声はご視聴いただけます。
代替肉に使用できる完全なたんぱく質
カナダのフードテック企業Smallfoodは7日間で育てることができる新しい代替たんぱく質を発表しました。
独自のバイオマス発酵技術で作成された微細藻類(びさいそうるい)ベースのタンパク質は「パーフェクトプロテイン(perfect protein)」呼ばれる代替タンパク質です。
2万種類を超える微生物を評価し、発見した新しい菌株を使い開発に成功したタンパク質は、従来の動物肉、養殖魚だけでなく、プラントベースのタンパク質よりも持続可能性が優れています。
語句説明:菌株
菌株とは、1つの細菌から分裂し、増殖した菌の集まりをいいます。
同じ菌の種類に属していたとしても、それぞれの菌株ごとに、共通する特徴や性質を持っている部分もあれば、菌株ごとに違う性質を持っています。
同じ人であっても、人種、さらには個人それぞれの特徴、性格が違うように、同じ菌に属する菌株であっても、性質は異なります。
参考:公益財団法人 腸内細菌学会
海の生産者「微細藻類」
地球の7割を占める海洋で微細藻類は生産者として位置しています。植物プランクトンと呼ばれたりして、そのほうが馴染みのある呼び名かもれません。
それだけでなく、微細藻類は陸の岩の表面や、コンクリートの壁にも付いています。
微細藻類には多くの種類が含まれており、形態、生息場所の違いがあり、至るところに生息していると言ってよいでしょう。
具体例をあげるとサプリメントの材料になっている「スピルリナ」がそうです。
バイオマス発酵の活用
Smallfoodのバイオマス発酵技術を使用して、7日で成長させることができるとしています。
「藻類ベースの代替タンパク質」の開発にSmallfoodは、カナダの民間投資企業、政府の助成金で総額2000万カナダドルの資金提供を受けています。
Smallfoodの創設者兼CEOのMarc・St-Onge(マークサンオンジ)氏は発見した新しい菌株と代替タンパク質について次のようにコメントしています。
私たちは海の未知の深さに冒険し、ことわざが言うように「干し草の山の中の針」を見つけました。そして今、私たちはこの発見を市場に出すことを可能にするプロセスとテクノロジーを開発しました。
発表された藻類ベースのタンパク質は味がとてもニュートラル(クセがない)で、溶けやすく、飲み物や食品、サプリメントに簡単に混ぜることができるということです。
加えて、ほとんどがアミノ酸で大豆やエンドウ豆と同等かそれ以上ということです。
タンパク質の割合は85%以上と高く、動物ベースのタンパク質に匹敵するスレオニンとメチオニンを含んでいます。
予定されている藻類ベースたんぱく質の使用用途は以下の通り
- 栄養補助食品
- 粉末製品(溶かして飲む)
- プロテイン入り飲料
- エナジーバー
- 肉および乳製品の代替食品
その他の利点項目
非遺伝子組み換え・消化性が高い・アレルゲンフリー・粉っぽくなく口当たりがよい
持続可能性の高さはプラントベースを超える
このタンパク質の生成に必要になる資源は、従来の食肉産業、養殖業、プラントベースのタンパク質生産より持続可能性が高いとしていて、自社のWebサイトでは以下のような数値をあげています。
- 牛肉と比較すると、温室効果ガスの排出量は30分の1
- 養殖魚に比べて、水の消費量は160分の1
- マメ科のタンパク質を生産するために農作物栽培に必要な土地の利用は16分の1
Smallfoodは生産する「藻類ベースのタンパク質」は企業向け(B2B)の製品として重点に置いているとメディア「green queen」でコメントしています。
代替タンパク質の第3の柱
ビルゲイツが資金調達で主導し、温泉の細菌からたんぱく質を作るNature’s Fynd。
アニマルフリーの乳タンパク質からアイスクリームを作るPerfect Day。
菌糸体ベースの代替ベーコンを販売するAtlast。
Smallfoodが開発した藻類ベースのタンパク質もこれらの「精密発酵技術」から作られたタンパク質に含まれます。
微生物の力で、今までの動物肉よりはるかに短い期間で生成が可能なタンパク質が「食の常識」を変えつつあります。
参 考
企業HP
メディア情報
https://www.healthline.com/health/nutritionists-guide-to-plant-based-protein
アイキャッチ画像出典:https://www.smallfood.com/