代替たんぱく質

キノコの菌糸体で代替ベーコンを作るスタートアップAtlast、多数の非公開企業へ材料として自社製品を提供

2020年12月21日、アメリカのスタートアップ企業Atlastは、菌糸体(キノコ根っこ)ベースの代替肉を複数の企業に、原料として提供すると発表しました。

今回の発表の概略は以下の通りです。

  • キノコの菌糸体の技術の元になったのは包装資材を製造する技術
  • 10日間で動物肉のサイズまで菌糸体を増やせる
  • 菌糸体を使うと植物ベースの代替肉の幅が広がる可能性

今後、代替肉のなかに菌糸体ベースのベーコンが食品が加わって、さらに代替食品のレパートリーが増えていくでしょう。

菌糸体ベース代替肉を企業に提供するスタートアップ

アメリカのAtlastは菌糸体ベースの代替ベーコンの開発に成功したスタートアップです。

2020年12月21日には、開発した菌糸体を原料として、複数の企業に提供するため提携をしたと海外メディアに発表しました。

Atlastは代替食品を開発するスタートアップのなかでは、一般消費者に向けた製品提供はせずに、企業向けに代替食品を卸す方向を取っています。

バイオテクノロジー企業Ecovativedesignが開発したプラスチックの代わりに自然の生分解性の包装材料(キノコパッケージ)。この製法に別の可能性を見つけ事業化、独立をしたAtlast

菌糸体で持続可能な包装資材出典:https://www.dezeen.com/

キノコの菌糸体とは

私たちが普段食材として見かけるキノコの根に部分にあたるのが「菌糸体」。

キノコの菌糸体出典:https://www.nissankenko.com/saibai/

キノコの菌は菌糸体に十分な栄養を貯めることができたら、キノコにあたる笠の部分を作る。

そのため、菌糸体には人の健康に役立つ栄養素が多く含まれており、小林製薬免疫研究ではシイタケの菌糸体を使い、免疫力の向上と高めた免疫力でガンの抑制に関わる臨床研究が実施されている。

スタートアップ Atlast(アトラスト)

Ecovativedesignは12年前に菌糸体で持続可能な包装資材を開発しました。

その後、「アトラスト」と呼ばれるマシュマロのような菌糸体フォームを開発。

この「アトラスト」を足場にしてココナッツオイル、風味、調味料が注入して代替肉ができるとしている。

Ecovativedesignはこの足場を代替肉用に作るためには専属の会社にする必要があると判断。Atlast Food.coが設立される。

最初の商品は代替ベーコン

菌糸体の足場」には植物ベースの代替肉に「肉としての形」を作れる可能性がある。

ステーキ肉のように密度を高めることも、ベーコンのようにカリカリにすることも、菌糸体の足場を利用すると可能とされている。

菌糸体ベースの代替ベーコンは「MyEats」出典:https://thespoon.tech/

同じように菌糸体の可能性に着目して、代替肉を作っているスタートアップEmergy Foodsは菌糸体で代替ステーキを開発している。

EcovativedesignのCEO: Eben Bayer

「足場のない植物ベースの代替肉はインポッシブルバーガーのようにミンチに限定される」

引用抜粋:https://www.forbes.com/sites/amyfeldman/2019/09/05/entrepreneur-behind-mushroom-root-packaging-spins-new-food-business-out-of-ecovative-to-focus-on-mycelium-based-meats/?sh=4d09fac73a0c

と述べている。

そして、多くの植物ベースの代替肉とは異なり、菌糸体ベースの代替ベーコンは6つの材料で作られている。

生産するために菌糸体のスラブ(厚板状)はスライスされ、調味料が注入、調理、ココナッツ脂肪で覆われ、包装される。

菌糸体のスラブ出典:https://www.atlastfood.co/

生産に必要な菌糸体のスラブ(厚板状)は長さ100フィート(約30m)、幅10〜20フィート(約3~6m)のベッドで菌糸の大きなスラブに成長させる。菌糸体をこのサイズにまで成長させる期間は10日間

Atlastの最初の菌糸体ベースの代替ベーコンは「MyEats」というブランド名で、ニューヨーク州アルバニーの食品協同組合で販売されており、高評価を消費者から得られている。

小売りの立ち上げから肯定的なフィードバックにもかかわらず、AtlastはB2B企業であり続けると述べている。

2021年には、今より大規模な生産施設の稼働予定しており、オランダのキノコ農家と協力して建設している。

今後、Atlast菌糸体の足場を使った植物ベースの代替肉製品や菌糸体ベースのベーコンを使った食品が製品化されて、代替肉市場に登場するでしょう。

参 考

https://vegconomist.com/products-and-launches/atlast-mushroom-bacon-sells-all-planned-capacity-through-2023/

https://thespoon.tech/atlast-fulfills-planned-capacity-through-b2b-partnerships/

https://thespoon.tech/ecovative-launches-atlast-food-co-a-spinoff-company-to-create-mushroom-scaffolding-for-meat-alternatives/

https://thespoon.tech/emergy-foods-makes-very-realistic-looking-steak-from-fermented-mushroom-roots/

https://www.crunchbase.com/organization/ecovative-designs/signals_and_news

https://vegconomist.com/products-and-launches/ecovative-launches-mushroom-based-bacon-following-7m-seed-funding-round/

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Junichi
新しい「食に関する常識」フードテックをわかりやすく要約記事にして配信。twitterで箇条書きで配信 取扱うジャンル: ゴーストキッチン・代替タンパク・キッチンロボなど 経歴: 大手二輪中古販売店でバイク整備士▶︎ANAの傘下の国際物流部門で貿易業務▶︎日本橋で寿司職人▶︎カナダで海運業務▶︎外資系倉庫型小売店▶︎2021年Webライター