- ユダヤ教の戒律のなかで唯一許された昆虫食
- 昆虫食は世界各地で導入が始まっている
- バッタ生産に必要な資源は牛に比べて極めて少ない
教えのなかで唯一食べることを許された昆虫
イスラエルには人が口にするべきものを規定したユダヤ教の教え「Kosha(コーシャ)」がある。このなかに唯一含まれる昆虫がバッタ。そのバッタを使いバッタプロテインパウダーを製造しているイスラエルの企業Hargol(ハーゴル)。
持続可能性と栄養価の高いバッタの育てる「バッタ農場システム」を開発し、2020年4月には資金調達300万ドル(約3億円)を完了した。
「世界の食糧問題」と「農業の生態系」の2つの要素を掛け合わせ、栄養のある持続可能性の高い製品を提供している。
出典:https://nocamels.com/2021/01/food-startup-hargol-grasshopper-protein/
聖書、コーランにも書かれていたバッタ
コーシャとして承認されているバッタは、イスラム教の経典コーランの中でも預言者ムハンマドを口にしていたという記述があるという。
さらに新約聖書に洗礼者ヨハネが蜂蜜と一緒にバッタを食べたとされている。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3つの教えで食べることが許された唯一の昆虫がバッタということになる。

世界的にも始まっている昆虫食
2019年の調査でアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、オセアニアなどの地域で昆虫がタンパク質として食されていて、地域によっては馴染みのない食材でありながら導入が進んでいるということだ。
食料となっているのはカブトムシ、イモムシ、ミツバチ、アリ、コオロギ、バッタ、イナゴなど2100種を超える昆虫。2017年の調査では、バッタは世界で4番目に消費されている昆虫とされている。
食べ方はそのままの姿で丸ごと食べるのではなく、タンパク質粉末で工業的に生産されている場合は多いということ。
これは使い勝手を考慮した結果でもあるが、食品になるまでの過程で発生する廃棄物の抑制にも効果的である。特に外食産業などで昆虫がそのままの姿では料理の過程で大量の廃棄物が出る。
昆虫は消費する資源が少ない
Hargolによると、バッタの飼料は牛よりも最大20倍効率的で、温室効果ガスの排出量を98.8%削減、消費する水は1000分の1に減らせるということ。
さらにバッタを増やすための土地は1500分の1少なく、廃棄物がゼロに近い農業を実現できたとしている。

Hargolはバッタの飼料に無農薬で化学肥料を使わないシバムギ(wheatgrass)を与えている。
シバムギは屋内垂直農法で栽培しているが、飼料の栽培に維持とコストがかかるため、将来的には乾物飼料などの代替飼料で飼育することが考えている。
乾物飼料は新鮮な草のコストのわずか3%であり、手作業によるメンテナンスが50%少なくて済むとHargolの創設者タミール氏はコメントしている。
乾物飼料で育つバッタも育てており、2022年にはバッタ農場に乾燥飼料を導入する予定。
昆虫食に立ちはだかる壁
2020年4月、HargolはSirius VentureCapital(シンガポール)とSLJInvestment Partners(オランダ)から資金300万ドルを調達しました。
しかし、Hargolが市場でシェアを獲得するためには越えなければならない「昆虫食への偏見」を壁がある。
出典:https://veganz.com/blog/veganz-nutrition-study-2020/
栄養や持続可能性が高いという利点があるものの。多くの先進国では昆虫食を食べることに魅力を感じないという傾向がある。
ベルリンを本拠地にするスーパーマーケットチェーンVEGANZが行った買い物客調査7カ国2600人を対象に「栄養や環境保護」について質問を行った。
その結果、全体の30%以上が菜食主義やフレキシタリアン(準菜食主義)の食生活を選択するということだった。
しかし、動物肉の代わりに昆虫食については73.1%が「食べない」と答えている。
創設者タミール氏は
1980年代、北米やヨーロッパで生の魚を食べることは受け入れられなかった。でも今日はみんな寿司を食べます。認識が変わったとコメントしている。
また、動画でタミール氏は
「ベジタリアンやヴィーガンの食生活をしたとしても、農作物栽培の過程で農薬が何万匹の昆虫を殺している。
そして、農薬で死んだ昆虫は他の動物に食べられる。事実として環境を傷つけている。しかし昆虫農場なら何も殺さない。
私たちは殺していた昆虫を食べるのだから、昆虫農場は効率的で持続可能性が高い」と述べている。
昆虫ベースの食品の利点を消費者にアピールして、顧客育成と購入行動の改善が昆虫食の普及には必要となる。
バッタを味のない高品質のプロテインパウダーに変えたのは原料として使い勝手を優先したためである。
出典:https://hargol.com/
最終的にはプロテインパウダーを原料に魅力的な製品に開発することが消費者の関心を集め、昆虫食に対する偏見の壁を取り払うことにつながる。
日本では無印良品の「こおろぎせんべい」が注目を集めていますが、あのような形まで持っていけると、コオロギでもバッタでもおいしくいただける可能性が高い。
個人的にはプロテインパウダーでコオロギハンバーグやバッタナゲットなど料理にしてみたら、抵抗が薄れるかもしれない。
しかし、昆虫食の普及にはこれからたくさん思考錯誤が必要になりそうです。
参 考
https://nocamels.com/2021/01/food-startup-hargol-grasshopper-protein/
https://nocamels.com/2020/04/grasshopper-protein-food-tech-hargol-raises-3m/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6728817/