代替たんぱく質

微生物発酵で乳たんぱく質をつくるイスラエルのスタートアップ企業Remilkが1130万ドルの資金調達

  • 微生物発酵で乳タンパク質が作れる
  • アニマルフリーで乳製品が生産可能
  • 作成された製品は動物性の乳製品と違いがほとんどない
  • 第3の代替たんぱく質として投資が集中

家畜を使わずに乳製品を作るスタートアップ企業

2020年12月9日、スタートアップ企業RemilkがシリーズAの資金調達で1130万ドル(約11億6000万円)調達と発表。

この資金調達にCPT CapitalourCrowdProVeg、食品企業であるHochlandTnuva、投資家ではBradley Bloom、Sake Bosch、 Amiad Solomon、BeniNofechfが参加。

この資金でRemilkは製品の生産と流通計画を加速させると見込まれている。

Remilkが開発している「細菌発酵」は家畜を使うことなく、乳タンパク質を作りだせるというもの。

そして、「細菌発酵タンパク質」は構造的、機能的には家畜から作られる乳タンパク質と同じものであるとしている。

細菌発酵タンパク質は乳製品を作るための原料として機能し、家畜を使うことなく乳製品(チーズ、バター、ヨーグルト、アイスクリーム、ミルク)を生産することが可能となる。これらの製品は「アニマルフリー乳製品(Animal-free Dairy)」と呼ばれる。

乳製品の代替品として植物性の油脂を使った製品が多く市場に出ているが、根本的にこれらの製品と乳製品は特性が異なるため、代替品としては機能が十分ではない。

しかし、細菌ベースで作られた「乳タンパク質」は構造上、従来の動物から作られる乳製品と同じものを作ることができる。

アニマルフリーの乳製品

3つ目の代替たんぱく質

動物肉の代わりとなるたんぱく質として、植物ベースの代替肉動物の細胞を培養して作る培養肉、そして3つ目に「発酵技術(精密発酵)」で作られた細菌発酵タンパク質が期待されている。

非営利団体The Good Food Instituteは2020年9月のレポートで代替たんぱく質の3番目に「発酵技術(精密発酵)のタンパク質」をあげており、発酵業界へ投資が集中していると述べています。

「発酵技術」を開発している企業は世界で44社、その半数がアメリカ拠点となっている。そして、そのうち21社が2019年と2020年で設立し、この2年間で立上げが急増。

加えて、2019年に「発酵技術」のスタートアップ企業全体で2億7400万ドルの投資があり、翌年2020年の7月までに4億3500万ドルの投資が行われた。

GFIの技術担当Liz Specht博士は次のように述べている。

発酵は新しい代替タンパク質の製品の力となっており、風味、持続可能性、生産効率を改善する大きな可能性を秘めている。

一部引用抜粋:https://www.gfi.org/blog-fermentation-state-of-the-industry-report

イスラエルのスタートアップRemilk

Aviv WolffOri Cohavi, PhDの2人よって2019年1月設立。

開発した細菌ベース乳タンパクを使った乳製品は、従来の乳製品と分子構造的には同一とRemilkは説明。

ラボで開発された乳製品は従来の乳製品と違いがほとんどなく、チーズ、ヨーグルト、クリームなどの食感を再現。

加えてコレステロール、乳糖、ホルモン、抗生物質を含まず、より健康的で安心であるしている。

animal-free dairy

創設者のAviv Wolffは発酵技術で作られた乳製品の持続可能性ついて次のように語っている。

動物を飼育する必要がないため、同じ量の乳製品を作る場合に生産に必要な土地は1%、原料は4%、水は10%で済む

一部引用抜粋:https://www.calcalistech.com/ctech/articles/0,7340,L-3880371,00.html

 

同じ分野で資金調達、製品販売をしているのはアメリカのフードテック企業Perfectday。独自開発した乳タンパク質を食品として承認を取得。

自社ブランド「BraveRobot」でフローラベースと呼ばれるアイスクリームを販売。老舗のアイスクリーム企業と提携してヴィーガンアイスクリームを販売している。

アニマルフリーアイスクリーム出典:https://braverobot.co/collections/flavor-packs

オーストラリアのスタートアップ企業ChangeFoodsも動物を含まないチーズのプロトタイプを開発。資金調達で開発スピードを加速させている。

Remilkと同じタイミングで資金調達を発表したスタートアップのNature’s Fyndは地熱温泉に生息する細菌を使い“完璧な”タンパク質を開発。大量生産へ資金を投入している。

まとめ

まだ、公開されている情報が少ない「精密発酵」「細菌発酵」。すでに巨額の投資を受け、開発を進めているスタートアップ企業は「第3の代替たんぱく質」の先行者のポジションと技術特許を取り、広く認識が進むでしょう。

そして、植物ベースの代替肉培養肉細菌発酵のタンパク質製品という3種類の代替たんぱく質が私たちの「新しい食文化」を作っていくことが想像できます。

個人的には「発酵」の分野では日本企業も優位を取ってほしい。

参 考

https://www.remilk.com/

https://www.greenqueen.com.hk/israeli-food-tech-remilk-raises-us11-3m-to-scale-microbial-fermentation-dairy/

https://www.geektime.com/i-heard-through-the-bovine-remilk-creates-animal-free-dairy/

https://www.calcalistech.com/ctech/articles/0,7340,L-3880371,00.html

https://en.globes.co.il/en/article-israeli-animal-free-dairy-co-remilk-raises-113m-1001352744

https://thespoon.tech/remilk-raises-11-3-million-for-its-microbial-fermented-animal-free-dairy/

https://www.foodnavigator.com/Article/2020/05/06/Remilk-Alt-milk-start-up-taps-microbes-not-plants-to-reinvent-the-meaning-of-dairy

https://www.gfi.org/alternative-protein-fermentation-investments-2020-media-release

https://www.gfi.org/blog-fermentation-state-of-the-industry-report

https://www.crunchbase.com/organization/remilk

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Junichi
新しい「食に関する常識」フードテックをわかりやすく要約記事にして配信。twitterで箇条書きで配信 取扱うジャンル: ゴーストキッチン・代替タンパク・キッチンロボなど 経歴: 大手二輪中古販売店でバイク整備士▶︎ANAの傘下の国際物流部門で貿易業務▶︎日本橋で寿司職人▶︎カナダで海運業務▶︎外資系倉庫型小売店▶︎2021年Webライター