まとめ○○選

キノコ、菌類の発酵技術のフードテック、スタートアップ企業まとめ5選

  • 条件を整えると非常に短期間でキノコベースの代替食品、素材の生産が可能
  • 家畜産業だけでなく、植物ベースの代替肉の代わりとしても利用が望まれている
  • 使い道が代替たんぱく質だけでなく、足場、うま味成分、苦み軽減など生産されるもの多種

予想されたトレンド

2020年1月、非営利団体Good Food Institute(GFI)は代替タンパク質に関する5つのトレンド予想を発表しています。

このレポートのなかで「発酵酵母」と「キノコ由来の革新的な成分、強化されたうま味」が予測されていました。

キノコ

さらにGFI別の発表では代替タンパク質の「3番目の柱」という位置づけ(植物ベースの代替タンパク質培養肉の次に)微生物発酵細菌発酵)が追加されました。

GFI の予想通り今回紹介する5つのスタートアップ企業はキノコの菌を使い、「菌糸体ベースの代替タンパク質」だけでなく「キノコベースの製品」と表現してもよいものを開発、生産して市場に流し始めています。

キノコ菌糸

キノコ、菌類の特性として、条件が整うとその成長スピードは速く、今までの常識では考えられないくらいの短時間で代替たんぱく質の生産を可能にしています。

 

「菌糸体ベースの代替ベーコン」を開発したAtlast Foodは、自社の菌糸体を製品に適したサイズに大きくさせる期間は10日間であると説明しています。

菌糸体ベースのベーコン出典:https://www.atlastfood.co/

 

キノコベースを開発したスタートアップ

Meati Foods

コロラドを拠点にしたフードテック企業Meati Foodsは菌類から作られた菌糸体ベース代替たんぱく質の開発に成功。

菌糸体ベースのステーキ出典:https://meati.com/

菌糸体(キノコの根)から抽出された豊富な栄養の含まれたタンパク質とひよこ豆、天然香料を材料に菌糸体ベースステーキを作成。

非公開でレストランデモンストレーションを行ったと発表しています。

大豆、エンドウ豆、小麦タンパク質を使用せずに代替たんぱく質の製品を開発している数少ないスタートアップ企業の1つ。

2020年11月にシリーズAの資金調達で2800万ドル(約29億円)の確保を発表しました。

 

自社のWebサイトでは「菌糸体のタネの状態から18時間であなたの皿の上に持っていける」という表現しています。菌類の成長の早さを感じさせます。

バイオリアクター

 

Mycorena

スウェーデン、ヨーテボリを拠点にしているMycorenaは自然界に存在する真菌類(キノコ、カビ、単細胞性の酵母などバイオテクノロジーを使用。独自のプロセスを開発して真菌ベースのタンパク質を開発。

Bioreactor出典:https://mycorena.com/

2019年には施設に拡大し、テストを行い、顧客としていくつかのグローバル企業との提携を発表しました。

2020年の初めには真菌ベースのタンパク質成分「Promyc」の発売しました。

Promyc出典:https://mycorena.com/

この製品は従来の動物肉だけでなく、植物ベース(大豆やエンドウ豆など)のタンパク質の代わりにもなると指摘しています。

Promycは発酵によって生産されるため、プロセスはビールの生産と非常によく似ていると言われます。2020年5月に120万ユーロを調達したと発表しました。

 

Atlast Food

アメリカのスタートアップ企業Atlastは、マシュマロのような菌糸体のプラットフォームにココナッツオイルや調味料が注入して、菌糸体ベースの代替ベーコンを開発。一般販売をしています。

マシュマロような菌糸体出典:https://www.atlastfood.co/

また、菌糸体は「足場」としての役割があり、植物ベースの代替肉に「肉としての形」を作り出せる可能性があるということです。

 

菌糸体ベースのベーコン出典:https://www.atlastfood.co/

2020年12月21日、Atlastは菌糸体ベースの代替肉を原料として提供する形で、複数の企業と提携したと発表しています。

企業向けに代替食品を卸すB2B路線をゆくスタートアップになります。

2021年には今より大規模な生産施設の稼働予定、オランダのキノコ農家と協力して施設を建設中です。

 

Myco Technology

コロラドを拠点にしたフードテック企業Myco Technologyはキノコ発酵のプラットフォームを開発しています。

MycoTechnologyのキノコ発酵技術は、特定の食品の苦味をブロックする「ClearTaste」、キノコベースのタンパク質「PureTaste」などの他の製品を作成する素材として使用されます。

苦味ブロック出典:http://redesign.mycotechcorp.com/ bitter blocker.

多国籍農業企業のSyngenta AGグループと、ベンチャーキャピタル企業のRadicleGrowthが主催したRadicle Protein Challengeで1位となり、100万ドルの賞金を獲得しました。

2022年後半にIPOの可能性のほのめかしているということです。

 

Mushlabs

ドイツ、ベルリンを拠点するMushlabs液体発酵技術を使用して、キノコの菌糸体を成長させ、代替タンパク質製品の製造に使う材料を開発、提供。

Mushlabs出典:https://www.mushlabs.com/

このキノコ菌糸体を「完全なバランスの取れた栄養」と呼んでいます。

 

この菌糸体生産には農業食品産業から出る副産物(サトウキビ、籾殻、使用済み穀物)を利用して生産されており、Mushlabsの説明する「高度に循環するプロセス」はアップサイクルの側面も持ち合わせています。

高度に循環するプロセス出典:https://www.mushlabs.com/

従来の食肉産業、植物ベースのタンパク質で使用される作物栽培よりも、はるかに少ない水スペースで済むということを売りにしています。

2020年8月に菌糸体の生産のためにシリーズAの資金調達1000万ドル(約10億円)を調達したと発表しました。

 

最後に

菌類をベースにした菌糸体代替たんぱく質も近いうちに、これらのスタートアップによって認知が広がります。

培養肉のそうですが、プラントベースとの違いは生産スピードと量

農作物を育てるには時間、労力、資源が必要。家畜を育てるには更にそれらが必要。

その両方を超えるスピードで生産が可能な菌糸体ベース。

菌類特有の成長スピードと生産されるものが簡単に制御できるようになれば、菌糸体ベース代替タンパクを手軽く自宅で作るデバイスが開発されるかもしれません。

※今後も新しい発表や情報があれば追加してきます

参 考

https://www.crunchbase.com/organization/emergy-food/signals_and_news

https://www.crunchbase.com/organization/mycorena/signals_and_news

https://www.crunchbase.com/organization/atlast-food/signals_and_news

https://www.crunchbase.com/organization/mycotechnology/signals_and_news

https://www.crunchbase.com/organization/mushlabs/signals_and_news

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Junichi
新しい「食に関する常識」フードテックをわかりやすく要約記事にして配信。twitterで箇条書きで配信 取扱うジャンル: ゴーストキッチン・代替タンパク・キッチンロボなど 経歴: 大手二輪中古販売店でバイク整備士▶︎ANAの傘下の国際物流部門で貿易業務▶︎日本橋で寿司職人▶︎カナダで海運業務▶︎外資系倉庫型小売店▶︎2021年Webライター