- ゴミ扱いのココナッツの皮を材料に接着剤使わず、輸送用パレットを開発
- 森林伐採を削減できて、農家の副収入となり、最後は土壌改良剤として土に還るパレット
- ココナッツパレットは非常に優れたアップサイクル製品
「次世代」ココナッツの皮から作った輸送パレット※Webページからも音声はご視聴いただけます。
見た目は茶色いプラスチックパレット
廃棄されるココナッツの皮から、持続可能で競争力のある価格の輸送用パレットを作成したオランダのスタートアップCocoPalletBV。
その強度のあるココナッツパレットは、まるで木材チップを固めた「ハードボード」で作られたようなパレットですが、接着剤や補強材、定着材は全く使っていない。それどころか、ココナッツパレットは自然に還るパレットということです。
廃棄品扱いの物に新しい価値を与えるアップサイクル。そのなかでもココナッツパレットは別格です。
ココナッツの廃棄物を材料にして、農家の副収入となり、木材の浪費を減らし、余分な害虫検査を不要にでき、木材パレットより少なくとも1ドル以上安い。そして、最後は肥料になるという誰も損をしないパレットとなっています。
Webサイトで2021年分のココナッツパレットの予約注文を受け付中。
木材パレットは森林伐採と使い捨てがセット
毎年17憶個の木製パレットが物流や倉庫、世界中のサプライチェーンの現場で使われています。そのパレットはまさに「縁の下の力持ち」、物資の輸送のために無くてはならないものです。
ですが、その材料は大量伐採された木材。しかも、これらの木材パレットのほとんどは、パレットとして使い道がなくなると再利用されることなく焼却され、天然資源の浪費につながっています。その量は年間1億7000万本。
それだけで済みません。天然素材の木材パレットには虫がつきます。そのまま木材パレットが他の国々を行き来すると、本来生息していない虫を他の国に持ち込むことになり、生態系の破壊が起こるということで植物検疫措置として国際基準があります。
そのため「燻蒸処理(クンジョウショリ)」を行う必要があり、追加で費用が発生します。
このように安価といわれる木材パレットには多くの問題が含まれています。
天然の接着剤で固まっているCocoPallet
ココナッツは世界で推定740億個が収穫され、必要とされるのはその中身。硬い外側の皮の85%は焼却処分か、海に廃棄されたり、放置されたりしています。
この廃棄物となっているココナッツの皮を材料にCocoPalletは作られています。
CocoPalletを開発したオランダのスタートアップCocoPalletBVは、2011年にMichiel Vos(ミヒール・ボス)によって設立されました。
当初、Michiel Vos氏は「竹の繊維」を使いパレットを作成しようと考えており、その繊維を固める天然の接着剤を探していたということです。
オランダのWageningen大学の研究者であるJanvan Dam氏は彼に「ココナッツの皮」を使うことをアドバイスします。
その理由はココナッツの皮にはリグニンが多量に含まれおり、ココナッツの殻を粉末状にして、高温でプレスするとリグニンと繊維が反応、お互いが強固に固まるという特性があるためです。
こうして「出来たココナッツの皮の板」は耐久性と耐水性に優れ、虫が食わない「ISPM15」に準拠した CocoPalletになります。
2016年に最初の生産設備が東南アジアで稼働。インドネシアのココナッツ農家から捨てるココナッツの皮を買い取り、生産を行っています。
創設者のMichiel Vos氏は農家からココナッツの皮の買い取ることについてコメントしています。
インドネシアの農家は、ココナッツからの収入を50〜100%増やすことができると思います。
パレットとしての機能
CocoPalletは静的負荷:4000Kgと動的負荷:1000Kgまで耐える構造となっており、パレット同士を組み合わせて積み重ねができます。
この荷重は第11型、13型、木材パレットと同じであり、パレットとして性能的な不足は見られません。
しかも、木材パレットは倉庫で無造作に積み上げるしか、保管する方法がありませんが、CocoPalletは表面の形が入れ子になっており、互いに積み重ねても安定し、省スペースでまとめることができます。
そして、最後にCocoPalletが廃棄されるときは、土壌改良剤として土に還ることになります。ココナッツの繊維はココナッツピートと呼ばれ土壌改良効果があり、肥料や水耕栽培に用いられています。
このCocoPalletを大企業が導入するようになれば、森林伐採を減らせるだけでなく、ココナッツ農家の収入増や貿易の害虫に対する検疫検査の不要、土壌改良といった多方面に恩恵を与えることができるでしょう。
動画のなかでは資金調達の2020年に予定していたようですが、コロナ大流行で資金調達完了の発表は見つかりません。
ですが、CocoPalletBVはシンガポールを拠点とする農業および食品技術アクセラレーターのGROWなど複数の団体から支援をされています。
いずれニッチなアップサイクル企業として有名になるでしょう。
参 考