- 麦ワラは穀物生産の副産物で年間5130万トンになると推定される
- 麦ワラと100%リサイクルされた木材繊維を組合せてこん包材を開発
- コロナビールの親会社AB InBevは、他のブランドにも導入する予定
麦ワラとリサイクルされた木材繊維を組合せ
世界的なビールブランド「コロナ」は、大麦ワラを材料にしたビール瓶のこん包材をリリース。
今までの木材資源、水を大量消費、無駄するこん包材の使用をやめて、持続可能なこん包材の使用を広げていくと自社のWebサイトで発表しました。
ビールの原料となるのは麦。厳密にいうと麦の「穂(ほ)」部分。

麦を生産する農家には、穀物生産の副産物として大量の麦ワラが残ります。昔から飼料や小屋の材料など使い道はありました。麦ワラ帽子の材料にもなるあれですね。

ですが、ビールメーカーが持続可能なこん包材を作るという取り組みは珍しく、多数のメディアが記事にしています。
今後、ビールメーカーの持続可能性への取組み、アップサイクル活用の事例となるでしょう。

大麦は世界で2番目に多い穀物

FAO(国連食糧農業機関)の統計によると、大麦は世界2番目に生産量の多い穀物。毎年1億7700万トンが生産されています。そして、麦ワラは世界で5130万トンになると推定。
今まで麦ワラの多くは、土壌改良剤、飼料として利用されるが一般的でした。ですが、近年は麦ワラの特性に着目して、建材の材料(壁材の原料)として利用が検討されはじめています。
コロナビールの親会社AB InBevは3年の開発期間を経て、麦ワラをビール瓶のこん包材にする新技術を開発したと発表しています。
世界に広げる麦ワラのこん包材
こん包材の製作技術はAB InBevのグローバルイノベーションアンドテクノロジーセンター(GITEC)が開発。
材料は100%リサイクルされた木材繊維に、麦ワラを組み合わせ、板紙を作成。耐久性は従来のものと同程度。
これにより、今まで材料となっていた木材資源を使わず、水も90%少なくでき、化学薬品や伐採にかかるエネルギーの節約にもつながるとしています。

加えて、新しいこん包材はリサイクルのときに、ほかの紙類と同じくリサイクルができる仕様になっていて、優れたアップサイクルを実現しています。
3月にコロンビアで新しいこん包材が使用されて1万個のコロナビールパック(6本)をリリース。続けて、アルゼンチンでは2021年後半に導入を開始予定。
AB InBevは最終的には、世界全体に拡大させることを目指していくそうです。
近年、業界問わず、持続可能性を追求して、今までの使い捨てになっていたパッケージの再利用やリサイクル材料の利用、生分解性パッケージの採用が加速しています。

オーガニックで最低限の材料から植物肉を製造する「Heura(ヒューラ)」は、パッケージをダンボールにすることで、年間12tのプラスチック使用の削減に成功している。
また、サラダ専門のJust Saladのデリバリーブランド「Housemade」は、デリバリーで使用される大量のパッケージのゴミを生分解性にして、事実上のゴミゼロを実現(食べ残しは例外)。
Just Saladをサブスクで利用するユーザーへは、再利用可能な容器(ボウル)を販売。容器の販売売り上げが2020年(前年比)は100%以上増加と発表しました。
今後、こん包材やパッケージにリサイクルされた資材、自然に還る「生分解性」のものを使う企業がさらに増えていきます。
コロナビールのように、製品そのものではなく、パッケージで持続可能性を消費者にアピールするのも1つ有効な方法ではないでしょうか。
参 考
AB InBevのWebサイト
メディア情報
メディア「Food Dive」
https://www.fooddive.com/news/corona-debuts-circular-packaging-made-from-barley-straw/597010/
メディア「Business Wire」
https://www.businesswire.com/news/home/20210317005586/en
メディア「Design taxi」
統計データ・調査データ
http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/inpho/docs/Post_Harvest_Compendium_-_BARLEY.pdf