植物肉、培養肉と従来の動物の肉に代わる「代替肉」の登場が相次いでいます。
さらにこれから注目を集める代替肉が「菌糸体ベース」の代替肉です。
アメリカ、コロラド州を拠点のスタートアップ企業Meati Foodsは肉の特性を多く再現した菌糸体ベースの代替肉(ステーキ)を開発し、生産体制を整えています。
2021年7月7日、専門メディア「green queen」はMeati Foodsが80,000平方フィート(約7400平方メートル)の菌糸体ベースの代替肉工場建設のため資金調達を完了したと発表。
2022年には菌糸体ベースの代替ステーキが商業規模で生産が始まると予想されています。
- 肉の特性を多く再現した菌糸体ベースの代替肉(ステーキ)を開発したMeati Foods
- キノコの根の部分にあたる菌糸体を培養し、最短18時間ほどで収穫可能
- 最終的には菌糸体ベースの代替肉を消費者に直接販売(D2C)を目指す
キノコの根の代替肉
知名度のあるBeyond Meat(ビヨンドミート)やImpossible foods(インポッシブルフーズ)の植物肉はすり身(ミンチ)状の製品をメインにしていますが、Meati Foodsは肉の塊「ヴィーガン・ステーキ」の生産を目指しています。
糸状菌(しじょうきん)の菌糸体をベースにした代替肉は植物肉よりも特性が肉に近いだけでなく、持続可能性も高い製品になるとされています。
その根拠は菌糸体ベースの代替肉の生産効率。
独自製法で菌糸体を成長させ、ステンレス鋼の大桶(おおおけ)をバイオリアクターにして菌を培養。
最短で18時間という短時間で菌糸体ベースの代替肉が収穫できると海外メディアにコメント。
収穫された代替肉の「切り身は見た目がよく」「口当たりがより肉っぽく」とされ、植物肉よりも” 肉を再現できている”とされています。
創設者は2人のエンジニア
2016年に機械エンジニアJustin Whiteley(ジャスティン・ホワイトリー)と環境エンジニアのTyler Huggins(タイラー・ハギンズ)の2人よってMeati Foods(ミーティ・フーズ)設立。
2人創設者は再生可能なリチウム電池や木炭ベースの水ろ過システム、真菌を使用し汚染された環境を修復する方法など、12以上の共同研究を執筆したということ。
創設者のTyler Huggins(タイラー・ハギンズ)氏は、菌糸体ベースの代替肉製造プロセスは世界中で使用されている従来の食品製造技術と似ている点があるとコメント。
その似ている食品の具体例になっているが日本の味噌や醤油、酒。
味噌や酒は大豆や米に麹カビ、糸状菌を添加して発酵させて製造された食品です。このとき菌は発酵をさせる「処理剤」として添加されています。
しかし、Meati Foodsは菌を「製品そのもの」にしています。
発酵のプロセスでは砂糖水を菌糸体にエサとして与えて菌を培養。
バイオリアクターで菌糸体を醸造するとステーキや鶏の胸肉のような繊維を形成するそうです。
そこに野菜ベースの成分やスパイスをブレンドして、菌糸体ベースの代替肉を成形。
わずか数十時間で代替肉を培養、生産が可能ということです。
植物肉の生産に必要な大豆やエンドウ豆を育てるための広大な土地も、大量の肥料、高価な農機具も必要がありません。
クローズドのステーキ試食会と資金調達
こうして生産された菌糸体ベースの代替ステーキは2020年7月にコロラド州のビストロで小規模な「試食会」が行われていたということです。
続く2020年11月、シリーズA資金調達で2800万㌦(約29億円)を調達。
サンタモニカを拠点とするAcre Venture Partnersが主導した資金調達では、既存の投資家のPrelude Ventures、VC Congruent Ventures、tech VC Congruent VenturesおよびTao Capitalが参加。
2021年2月の段階では、具体的な菌糸体ベースのステーキの販売時期は未発表でした。
ですが、高級レストランに菌糸体ベースのステーキを提供して、ブランドを構築、サプライチェーンの立ち上げを計画。
2021年7月、シリーズBの資金調達では5000万ドル(約52億円)を確保。
調達した資金のほとんどを生産工場の建設に使うとメディアに発表しています。
メディア「Food Business News」の記事ではMeati Foodsがホールカットの代替肉を生産する「都市農場」と生産工場を表現しています。
生産される製品は「代替ステーキ」と「代替チキン胸肉」のような大きな肉の塊と予想されています。
2022年には本格的な製品の商業規模での供給が可能となるでしょう。
菌糸体ベースの代替肉のメリット
菌類の培養に砂糖水を使用していることから、大豆、エンドウ豆、小麦などの豆類、穀物類を原料にする植物肉生産よりも必要な資源や労力が少なく済みます。
しかも菌類の培養であれば、広い土地、大量の肥料だけでなく除草剤、殺虫材も必要ありません。
以上のような理由から菌糸体ベースの代替肉は植物肉よりも持続可能性が高いという利点があるとされています。
さらに創設者のTyler Huggins(タイラー・ハギンズ)氏はコロラドにあるビール製造の過程で出てしまう副産物「モルトフィード」を菌類のエサとして使えないか検討しているそうです。
ビール製造の過程で大量排出されるモルトフィード(仕込み麦芽粕(ばくがかす)は、一言表現するなら「アミノ酸やビタミン類も多く含んだ麦カス」。
砂糖水の代わりに菌類にエサとして与えることができるとMeati Foodsの製品はアップサイクル製品としての価値も高まります。
この発想は単なるアイディアではなく、ドイツの菌糸体ベースのタンパク質を開発しているMushlabs(マッシュラブ)がすでに実用化に成功。
使用済みの穀物やおがくずなど農林生産産業から出る副産物を材料にして、菌糸体のタンパク質を培養しています。
この菌糸体タンパク質はアップサイクルとしての役割があり、Mushlabsは「高度に循環するプロセス」と呼称しています。
菌糸体ベースの代替肉の欠点
少ない資源で短期間に生産できる菌糸体ベースの代替肉ですが、すべて特徴が代替肉に向いているわけではありません。
菌糸体ベースのタンパク質の欠点は「味」と言われています。菌糸体自体にはほとんど味がなく、風味も少ないことが多く、代替肉を肉っぽくするためには味と風味の添加が必要ということです。
現状は多数の野菜やスパイスを使って風味を作り出しているということ。
完成予定の製品は5つ未満の機能性成分が含まれ菌糸体90パーセント、他の成分10パーセントをブレンドする予定ということです。
期待される3番目の代替肉
2人のエンジニアが創設したスタートアップMeati Foods(ミーティ・フーズ)。
菌糸体(キノコの根)を培養して製造される代替肉は植物肉のミンチとは違い、ステーキや切り身といった“カットされた肉”。
シリーズBの資金調達で大規模な生産工場の建設を進め、2022年の商業規模の製品販売に向けて動いています。
参 考
企業HP
メディア情報
https://agfundernews.com/meati-secures-28-million-for-whole-cut-alternative-meats.html
https://thecounter.org/move-over-plant-based-meat-fungi-steaks-are-here/
https://thespoon.tech/i-tried-meati-foods-mycelium-based-steak-it-was-definitely-meaty/
https://vegnews.com/2020/11/colorado-startup-raises-28-million-to-get-its-vegan-steaks-to-market
https://companyweek.com/article/meati-foods