- Float Foodsはプラントベース代替卵を2022年に発売を予定
- 主原料はマメ科の植物、代替卵でありながら白身と黄身がある
- アジアには世界的な鶏卵の消費国に集まっている
アジア初の植物ベース代替卵
シンガポールのスタートアップ企業Float Foods(フロートフーズ)は、アジア初のプラントベース代替卵を開発、製品化したフードテック企業。
製品「OnlyEg」は“白身”と“黄身”が分かれており、今までのプラントベース代替卵とは異なる仕様の製品です。
従来の代替卵は、いわば“ときたまご”の状態で製品化されており、「OnlyEg」はより本物の「卵」に近い状態に再現できています。
有名なアメリカ代替卵企業Justの「JUST Egg」では、オムレツは作れても、目玉焼きは作れません。
Float Foodsは2022年までにOnlyEgを市場に提供するとコメントしており、輸入に頼っているシンガポールの鶏卵市場を一変させる可能性を持ちます。
市場規模こそ小さいが急成長の代替卵
アメリカの非営利団体Good Food Instituteのレポートによると、2019年の段階でアメリカの植物ベース食品の業界全体売上は50億ドル(約5000億円)。
そのなかでプラントベースの代替卵の市場規模1000万ドル(約10億円)と推定されています。
市場規模の額からみると、代替卵の市場規模は大きくはありません。代替チーズの市場規模でも1億8900万ドル(約190億円)と推定。
ですが、代替卵の成長率は、ほかの代替食品とは違った動きしています。2019年の売上を過去2年間と比較すると228%という急成長。
あくまでアメリカの市場という限定されたレポートですが、それでもその市場の大きさや成長のスピードはここ数年で起きたことです。
アジアに含まれる国が鶏卵の上位消費国
2020年に9月に国際鶏卵委員会(IEC)が、世界の鶏卵消費量を国別にまとめたレポートを発表。
年間の鶏卵消費量の上位を占めるのが、メキシコ(1位)、日本(2位)、ロシア(3位)、アメリカ(4位)、中国(4位)、コロンビア(6位)と続き、さらに韓国が9位にランクイン。
そのあとにモンゴル(31位)がとなっており、アジアは鶏卵の一大消費地域ということになります。
参考情報:全農たまご株式会社
シンガポールの卵市場
シンガポールは年間約20億個の鶏卵を消費しており、そのうちの70%がマレーシアからの輸入品。しかもシンガポール全体の食料品の9割を輸入に頼り、自給率が低い状態となっています。
シンガポール政府は、この食料自給率の低さを改善する目標「30×30」を発表。
2030年までに食料自給率を30%するため、国外からフードテック企業、アグリテック企業の誘致を行い、“フードテックのハブ化”が進んでいます。
さらにFloat Foodsの開発プロセスにおいて、シンガポール科学技術研究庁、食品バイオテクノロジーイノベーション研究所、シンガポール・ポリテクニック・フードイノベーションアンドリソースセンターなどが協力的であったことを創設者のVinita Choolaniがコメントしています。
設立のきっかけはコロナ大流行
Float Foods(フロートフーズ)は2020年6月に設立。創設者のVinita Choolani(ビニタ・チャローニ)はシンガポールの女性向けヘルスケア企業INEX INNOVATEの設立を支援した経緯を持つ女性起業家。
メディア「VULCAN POST」よると、Float Foodsの設立のきっかけとなったコロナ大流行で、食品確保に大きな支障があったことを語っています。
そこで、シンガポールの輸入に依存した食料事情に大きな問題があることに気づいたとコメント。
約6カ月の研究開発を行い、2020年12月からシリーズAの資金調達を開始。2021年3月末までに100万㌦の調達を目標としています。
植物ベース代替卵「OnlyEg」
2020年11月30日にFloat Foodsはプラントベース代替卵「OnlyEg」を発表。
卵の特徴的な“白身”と“黄身”に分かれた構造を再現した最初の商業的な代替製品になる可能性があります。
フランスで2人の生物学者が始めたスタートアップLes Merveilloeufsが、Float Foodsのように全卵の代替卵を開発中ですが、まだ製品化を実現したという発表はされていません。
OnlyEgはマメ科のタンパク質を原料にして、鶏卵に含まれるようなホルモン剤はなく、たんぱく質も卵と同等以上になるように開発されているとしています。
加えて、従来の代替卵製品で実現不可能だった目玉焼きを作ることが可能。さらにアジア圏の料理に多い「半熟卵」も再現できるということです。
先行して販売が進んでいるアメリカの代替卵企業Justの「JUST Egg」、イギリスの代替卵企業Plant Headsの「No-Egg Egg」も、その代替卵の状態は、いわば“ときたまご”の状態。それではオムレツは作れても、目玉焼きは作れません。
加えて、卵には数多くの機能性があり、代替卵には多数の機能性の再現が求められます。
OnlyEgにどれくらいの機能性が再現されているのかは、まだ未公表です。今後の情報公開が待たれています。
メディア「Vegconomist」よれば、Float Foodsは代替卵だけでなく代替ヨーグルト、代替チーズ、代替卵パティ、細切り代替卵などの開発も計画していると発表。
Float FoodsはOnlyEgを2022年までに商業的な発売を予定しており、シンガポール政府の推進する「30×30」計画の目標に貢献できるとしています。
鶏卵の70%を輸入に頼るシンガポールの市場に参入できる絶好のポジションにいるといっても良いでしょう。
追記情報
2021年3月15日、Float Foods(フロートフーズ)は投資企業Temasekの慈善部門の非営利組織Temasek Foundationから非公開の助成金を受けることをメディア「Agfunder News」が報じました。
助成金を使い、全卵代替卵のOnlyEgの栄養強化と貯蔵寿命を延ばすことに取り組むとコメントをしています。
Image Source:https://www.floatfoods.com/
参 考
企業サイト
メディア情報
メディア「Agfunder News」 2021年3月18日追記情報
https://agfundernews.com/plant-based-whole-egg-startup-Float Foods-gets-temasek-grant.html
メディア「The Spoon」
https://thespoon.tech/singapores-Float Foods-unveils-a-plant-based-food-incubator-for-indonesia/
メディア「Qreen Queen」
メディア「Poultry World」:アジア太平洋地域の卵産業のダイナミクスとパターン
メディア「Insidefmcg」
メディア「Vegconomist」