- アイディアはNASAの宇宙旅行
- 微生物から必須アミノ酸9種類を含んだプロテインパウダーを作れる
- 温暖化ガスをたんぱく質の原料にして削減し、世界人口増加による食糧危機も解決
空気からタンパク質を作る!?を実現するスタートアップAir Protein※Webページからも音声はご視聴いただけます。
温暖化ガスをたんぱく質に
2021年1月7日、カリフォルニアを拠点にするAir Proteinは資金調達を発表。ラボで作成された空気中の元素から作られた「エアプロテイン」を商業化させるラボを立ち上げる。シリーズAで調達された資金は3200万ドル(約32億円)。
独自技術を用いて、地球上のどこでも構築可能と説明するたんぱく質を生産する「農場」。その起源となる技術は最新のものではなく1960年代にNASAによって開発されていた。
従来の農業から大量排出される温暖化ガスをたんぱく質の原料にして削減し、世界人口増加による食糧危機の解決策にするという「一石二鳥」が可能な技術だ。
宇宙の食糧問題
1960年代70年代にNASAの科学者たちが火星や遠い星々を移動するとき、限られた空気・水・資源から食料を得る方法を研究。そのときのアイディアとして「炭素循環」を考えつく。
宇宙飛行士が呼吸して二酸化炭素を吐き出し、その二酸化炭素は微生物に吸収させ、栄養価のある作物にする。そして宇宙飛行士はその作物を食べ、さらに二酸化炭素を呼吸のたびに出し、それを微生物に吸収させ作物を作らせる。
このアイディアをCEOのLisa dysonは宇宙ではなく、地球の炭素問題に役立てるためAir Proteinを設立。
タンパク質もオイルも作れる微生物
NASAのアイディアを実現する微生物は「水素酸化細菌」と呼ばれるもので、Lisa dysonたちは研究室で培養し始めた。
参考資料:水素酸化細菌の炭酸固定によるグルコースポリマーの製造
その結果、微生物は二酸化炭素から必須アミノ酸をつくり出し、さらに動物由来のタンパク質に類似したアミノ酸を含むプロテインパウダーがつくり出せることは判明。加えて、柑橘油に似た油もつくり出すことが可能とわかる。
このエアプロテインパウダーを用いるとシーフード、鶏肉、ポーク、ビーフなど、ほぼすべての種類の代替肉が作ることが可能だという。そして、このパウダーを生産するには数時間で済むと説明している。
エアプロテインパウダーは必須アミノ酸9種類をすべて含み、空気からできているため遺伝子組み換えや農薬、ホルモン剤も使われていない。
今回シリーズAで調達した新しい資金で、エアプロテインパウダーを原料したさまざまな種類の代替肉の開発と大規模生産を支援するラボを立ち上げるということ。製品は消費者に直接販売するものになる予定。
空気からたんぱく質を作るという非常に特異なスタートアップ企業Air Protein。他の代替たんぱく質を作る企業とは発想も材料も異なる。
他にもAir Proteinと同じように空気からたんぱく質を作ろうとしている企業がある。フィンランドのスタートアップ企業SolarFoods。
こちらは「ソレイン」と呼ばれるたんぱく質を微生物からつくり出す。その製造施設を2022年に操業させる予定だ。
この2社の商業化が大成功とき、温暖化の問題も同じく解決されているかもしれない。
参 考
https://www.businessgreen.com/news/4025525/air-protein-raises-usd32m-spur-commercialisation-lab-meat
https://thespoon.tech/air-protein-raises-32m-to-make-meat-from-air/
https://zecopress.com/2020/09/24/air-protein/
https://www.crunchbase.com/organization/air-protein/signals_and_news