- 環境制御型農業は電気代が高い
- フィルムに日光に反応して赤く光る量子ドットを埋め込む
- 温室にフィルムを設置すると野菜の収穫量が10~20%増える
温室に日光が当たると光り出すフィルム
育成環境を人工的に制御して農作物を育てる環境制御型農業。これには植物育成のための光量確保に使う電気代がコストとして大きなウェイトを占める。
この問題に材料工学企業:UbiQD(ユビキタス)は温室の農作物に効率よく光を与える半導体材料「量子ドット」を使用した照明「UbiGro発光温室フィルム」を開発。
従来のLED照明を置き換えることで効率の良い最適な光を温室で確保したいと考えている。
維持費と収穫量がトレードオフの農業
特に温室を使う環境制御型の農業施設では周りの自然環境の影響(害虫、季節、天災、土壌問題)を受けず、農作物が効率的に生産可能。
その反面、環境維持のためのエネルギーコストが高く。アメリカの屋内農業の問題点として、多くの施設は十分な電力を供給する設備が整っていないと指摘している。
UbiGro発光温室フィルム
2014年に設立されたUbiQD(ユビキタス)は製品の多くにナノテクノロジーを活用。その1つに温室内の光品質を最適化するフィルムを開発。フィルムに埋め込まれた量子ドットはUVライト(日光)が当たると発光する特性を持つ。
その発光する色は量子ドットのサイズで変わり、サイズの調節ができる。UbiQDは植物の光合成効率の良い赤やオレンジ色に発光する量子ドットをフィルムに埋め込み、発光するフィルムを開発した。
このフィルムが日光に含まれる青色の光をオレンジ色や赤色の光に変換して、農作物に必要な光の品質を向上させ収穫量を増加が期待できる。
量子ドット(QD:Quantum Dot)
量子ドット(QD:Quantum Dot)とは、ナノメートルサイズ(約2~10 nm)の半導体材料です。その小さな粒径により、量子ドットは量子閉じ込め効果やサイズ依存性の電気的および光学的性質を示します。
2019年から2020年までに5カ国19の商業温室環境で実証プログラムが行われた。その結果、UbiGroフィルムの下の農作物(トマト、レタス、イチゴ)の収穫量がトマトは20%増加、レタスとイチゴは約10%増加。フィルムによる光品質の改善が実証された。
同社の農業研究ディレクターであるDamonHebert氏は
「UbiGroフィルムは電気を使用していませんが、LEDによる光スペクトルの変更には電気が必要です」と指摘。
電気を使ったシステムよりも、コストが低く温室内の環境を改善することができるとしている。
量子ドットの特性上、発光のために日光が必要なため日光の入らないコンテナファームや垂直農法に適さない。しかし、温室農業にとって効率よく光の品質を向上させ、収穫量を増やす光源は必要性が高い。
自社サイトでは2020年10月から実証プログラムの第2フェーズに参加する商業温室農業の受付を開始している。
2020年12月9日、ラウンドAの資金調達で700万ドルを調達したと発表。
新たな資金はUbiGroフィルムの展開をサポートするために使用される予定、数百万平方フィートに及ぶ主要な国際温室事業が含まれていると説明している。
参 考
https://www.greenbiz.com/article/microgrids-indoor-agriculture-go-together-peas-and-carrots
https://www.crunchbase.com/organization/ubiqd/signals_and_news