代替たんぱく質

微細藻類から最短3日で代替たんぱく質を生産するSophie’s Bionutrients

  • 持続可能性の高さを比較する対象が畜産だけでなく、大豆たんぱく質も含まれる
  • 生産に必要な土地は0.02ヘクタール、そこから1週間で1トンの代替タンパク質が生産可能
  • 微細藻類のエサになっている原料は食品産業の廃棄物(おから使用済み穀物サトウキビ繊維

 

抜群の持続可能性と生産性がある代替タンパク質

微細藻類から代替タンパク質の製造を開発するシンガポールのスタートアップ企業「Sophie’s Bionutrientsソフィズ・バイオニュートリエンス」。

特許出願中の技術で、最短3日間という短期生産と栄養バランスの取れた代替タンパク質を生産。

藻類

その持続可能性の高さを比較する対象は、今までのフードテック企業がしてきた畜産業だけに限定されていません。

Sophie’s Bionutrientsの持続可能性の高さを測る比較対象には、植物肉に多く使用されている「大豆」も含まれています。

大豆

メディアではプラントベースの代替肉で必要な大豆よりも、持続可能性が高いことをコメントで述べています。

微細藻類から作られた代替タンパク質の高い栄養価、生産にかかる時間とコストの違いは、従来の畜産業界VSフードテック業界という構図を変化しているかもしれません。

牛舎

それはまるで、フードテック業界内で「持続可能性の高さ競争」をしているようにも見えます。

実際に藻類から代替タンパク質新しい原料を作ろうとする企業が、世界的に増えつつあるため、その流れは加速するかもしれません。

 

藻類ベースの代替タンパク質の開発に投資と注目が集まる

2020年4月、イスラエルのスタートアップ企業Yemoja(イエマンジャ)は、微細藻類から「ファストトラック・フォトバイオリアクター技術(fast-track photobioreactor technology)」と呼ばれる技術を利用したプラットフォームを発表

facilitiesImage Source:https://yemojaltd.com/facilities/

目的に合わせて微細藻類から栄養化合物を生産(サプリの原料:フコキサンチン、多糖類、黄色の色素:キサントフィル、カロテノイド、酵素など)。

主にサプリメントや化粧品の材料を想定し、シードラウンドでは400万ドルの資金を調達しました。

 

2021年2月、カナダのフードテック企業Smallfoodは、7日間で生産できる微細藻類ベースのタンパク質「パーフェクトプロテイン(perfect protein)」を発表。

代替タンパク質Image Source:https://www.smallfood.com/

2万種類を超える微生物を評価して、発見した菌株を培養、発酵させて、代替たんぱく質を生産。

野生に存在する藻類のため、非遺伝子組み換え扱いの栄養価の高いプロテインパウダーを、原料として他社に供給するとメディアにコメントしています。

 

FoodTech 500ランキングにもランクイン

2021年3月11、12日に開催される2021Future Food TechSummitSophie’s Bionutrientsの技術を紹介される予定です。2020年ではFoodTech 500ランキングでも取り上げられており、藻類の可能性の高さが広まりつつあります。

フードテックサミット2021Image Source:https://futurefoodtechsf.com/

はじまりは貝アレルギー

微細藻類のタンパク質開発のきっかけは、Sophie’s Bionutrients(ソフィズ・バイオニュートリエンスの創設者:Eugene Wang氏の娘Sophieが貝にアレルギーであったことから始まります。

ホタテ

当初はエンドウ豆たんぱく質を使った植物ベースのシーフードブランドを立ち上げていたということです。しかし、すぐに多くの人が従来のシーフードと同等の栄養のあるものを求めているのに気づきます。

 

そして、Eugene Wang氏は藻類を食べる魚が栄養素を得るということを知り、微細藻類の代替タンパク質を開発と製造の取組みを始めたということです。

創設者Eugene WangImage Source:Eugene Wang

代替タンパク質の新しい持続可能性

Sophie’s Bionutrientsソフィズ・バイオニュートリエンスの代替タンパク質の特徴は、生産にかかる時間の短さだけではありません。

微細藻類のエサImage Source:https://sophiesbionutrients.com/

生産に必要な材料(藻類に与えるエサ)も持続可能性の高さを感じさせます。材料となっているのは、食品業界からでる廃棄物(おから使用済み穀物サトウキビの繊維)です。

これらの廃棄物扱いの材料をエサとして、独自の微細藻類に与え、バイオリアクターで育て、最短3日で収穫することができます。

バイオリアクター

つまり、Sophie’s Bionutrientsの代替タンパク質は「アップサイクル製品」という側面を持っていることになります。

 

この微細藻類から作られたタンパク質はWHOが設定した要件が超える「高品質の必須アミノ酸」を60%含んでいるということです。

自社サイトでは、製造に必要になるスペースは0.02ヘクタール、そのスペースから1週間で1tの代替タンパク質が生産可能だと掲載。そして、そのような省スペースで作れるたんぱく質を「アーバンプロテイン(URBAN PROTEIN)」と呼称しています。

メディア「Vegconomist」の記事では、植物タンパク質に含まれる必須アミノ酸は限定されてしまうが、微細藻類の代替タンパク質はバランスの取れたアミノ酸が含まれているとコメント。

そして、微細藻類はビタミン、抗酸化物質、オメガ-3脂肪酸も豊富であることを述べています。

Sophie’s Bionutrientsソフィズ・バイオニュートリエンスの生産する代替タンパク質の持続可能性の高さをWebサイト「World Food Innovations」次のようにまとめています。

  1. 必要な土地は、多くなく屋内で生産することができます(森林破壊なし)。
  2. 使用する水の90%以上をリサイクルできます。水はほとんど浪費されていません。
  3. 生産サイクルは速く、大豆は45〜65日、牛肉は1.5年であるのに対し、わずか3〜10日です。
  4. システム全体を大都市圏の近くに設置して、農業と輸送の必要性を減らし、今日世界が直面している「食料安全」と「サプライチェーンの混乱」の問題に対処することができます。
  5. 微細藻類には、使用済み穀物おから糖蜜などの産業食品廃棄物が供給されています。これは循環経済とコスト削減のためです。
  6. さらに重要なことは、プロセス全体で肥料除草剤抗生物質、さらには成長ホルモンさえも使用しないことです。環境と人体に本当に健康です。

今までのプラントベースの代替肉の材料として、重要な役割を果たしてきた大豆。その大豆よりも高い持続可能性を誇る微細藻類ベースの代替タンパク質

フードテック業界で持続可能性を今まで以上に高める研究開発が進んでいます。

 

参 考

企業HP

https://sophiesbionutrients.com/

https://www.f6s.com/sophiesbionutrients

メディア情報

メディア「Food Ingredients First」

https://www.foodingredientsfirst.com/news/sophies-bionutrients-recognized-for-sustainable-future-from-microalgae.html

メディア「Vegconomist」

https://vegconomist.com/startups/sophies-bionutrients-alt-protein-products-made-from-microalgae/

ABOUT ME
Junichi
新しい「食に関する常識」フードテックをわかりやすく要約記事にして配信。twitterで箇条書きで配信 取扱うジャンル: ゴーストキッチン・代替タンパク・キッチンロボなど 経歴: 大手二輪中古販売店でバイク整備士▶︎ANAの傘下の国際物流部門で貿易業務▶︎日本橋で寿司職人▶︎カナダで海運業務▶︎外資系倉庫型小売店▶︎2021年Webライター