- 廃棄された野菜、果実を材料に高タンパク質サプリメントの開発に成功
- 試作品のなかには、市販のプロテインパウダーよりも高タンパクなものができた
- 非営利団体の調査で市販の有名なプロテインパウダーには有害物質が検出された
ゴミ扱いの果実・野菜からサプリメント
イギリス拠点のNutrapharma(ヌトラファーマ)は食品廃棄物を原料にプロテインパウダー・サプリメントを作成する試みを行い、市場価値が十分にあるサプリメントの開発に成功。

食品廃棄物の処理で発生する炭素排出量を減らす解決策(ソリューション)の先駆け的な存在です。
これを「農場からカプセルのトレーサビリティ(farm to capsule traceability)」と呼んでいます。
メディア「green queen」よると開発されたいくつかのプロテインパウダーは、市販のホエイプロテインパウダーよりもタンパク質の量が多いということです。
廃棄された食品に新しい商業的用途を見つけることが出来れば、資源効率を向上させ、「アップサイクル・プロテイン・サプリメント」という新しい価値と可能性を市場に提供できます。

世界の食品廃棄物だけで約20億の人を養える
World Food Program(世界食糧計画)によると、世界で毎年約1兆ドルの食品が失われ、または無駄になっているとされています。
加えて、世界の食品の約3分の1は消費される前に浪費、腐敗していると分析。
国連食糧農業機関(FAO)からは、この無駄になっている食品で約20億人の人に十分な食糧を確保できると分析しています。

先進国では、この食品廃棄物の問題解決に再資源化や飼料、エネルギー源としての研究や取り組みが進行中です。
従来のプロテインパウダーには重金属など有害物質
出典:https://cleanlabelproject.org/
非営利団体Clean Label Projectは製品のなかに含まれる重金属、残留農薬、合成樹脂に加える可塑剤(かそざい)に焦点を当て、アメリカ食品と安全性に新しい基準を作ろうしている団体です。
2018年、Clean Label Projectはプロテインパウダーのなかに含まれる毒素に関するレポートを発表しました。
そのレポートによると、130種類の毒素がどれだけ含まれているかを、134のプロテイン製品でテストして、成分がどれだけクリーンか調べたそうです。

その結果、多くのプロテインパウダーには鉛、ヒ素、カドミウム、水銀などの重金属が含まれていることが判明。
それだけなく、製品の容器として使用されるパッケージからビスフェノールA(BPA)など滲み、製品自体に含まれていたことも発見されました。
レポートからは多くのプロテインパウダーには有害物質が含まれ、ブランドや知名度だけを基準にして製品を選ぶことの危険性を伝えています。
このレポートによる「最高のプロテインパウダー製品リスト」と「最悪のプロテインパウダー製品リスト」の一覧が確認できます。
食品廃棄物の抑制とビジネス

大量廃棄される「見た目の悪い農産物」を消費者に手ごろな価格で販売するビジネスから始まったImperfect Foods。
「訳あり製品」を引き取り、手ごろな価格でアメリカ全土の利用者に配達するサブスクサービスを展開しています。
2021年1月21日、9500万㌦(約96億円)のシリーズDの資金調達を完了。
扱い品物を増やし、農産物だけでなく他の製品(余剰品扱いのコーヒー、外箱がつぶれたテッシュなど)も扱うようになり、オンライン食料品として価値を提供しています。
多数のサンプルから口当たりのよい濃縮粉末
Nutrapharma(ヌトラファーマ)の最高責任者であるEric Hilton(エリック・ヒルトン)博士は、自身の体験から食品廃棄物の解決のヒントを得たとコメントをメディアにしています。
最初にEric Hilton博士は、スコットランドの農家を調査し、廃棄された果物や野菜を使う様々な方法をデザインしたということです。
その過程でNutrapharmaの製粉技術を用いた新しい乾燥プロセスを使用。「栄養価の高く口当たりの良い濃縮粉末」を生み出しました。

この濃縮粉末を分析した結果、一部のサンプルは市販のホエイプロテインパウダーよりもタンパク質の含有量が高くなっているということです。
そして、濃縮粉末は植物ベースとなっていて、有害な毒素を含まないことから、健康意識の高い消費者が見込み顧客になると予想されます。
製品化をさらに進めるためNutrapharmaは、イギリスの宇宙大学、政府機関、投資コミュニティにパートナーシップを持つSPRINTから助成金を供与されます。
予定としては2021年4月ごろには市場に製品が投入されるということです。
Nutrapharma(ヌトラファーマ)が作り出した「廃棄食品から作られた高タンパク質粉末」。
市場で一定の認知があれば、「アップサイクル・プロテイン・サプリメント」という新しいサプリメント分野が確立しそうです。
参 考
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