代替たんぱく質

植物ベースの代替肉をより「肉」にするスピルリナのヘム 2.0

  • ヘムは血液や肉に含まれるタンパク質の1つで、肉を焼くときの肉の香り、食べたときの味わい、食感をつくる
  • 発見されたヘムオーガニック・スピルリナから製造されており、非遺伝子組み換え製品の扱い
  • 2021年の年末までに、市場の需要を対応する供給の実現を予定している

 

偶然見つかったヘム2.0(Heme2.0)

藻類ベースの着色料を開発するBack of the Yards Algae Sciences (BYAS)は、食品着色料の開発中に、偶然にも「ヘムの類似体」の発見をします。

heme2.0(イメージ)

「ヘム」というものが、広く知られるようになったのはImpossible Foodsの「出血する」プラントベース代替肉からです。

ヘムの役割は、動物の食肉から匂う「肉の香り」、「」、「食感」を真似るため、プラントベース代替肉に着色添加物として使われます。

そして、大豆やエンドウ豆のタンパク質だけでは、再現できない「肉っぽさ」を模倣し、Impossible Foodsは人気のあるプラントベースの代替肉企業として市場でポジションを確立しました。

一般的にはImpossible Foodsの開発したヘムを手に入れることはできません。

 

ですが、Back of the Yards Algae Sciences (BYAS)は、ヘムの「類似体」をプラントベースを開発、生産している企業に広く提供する予定です。

このBYASが発見した「ヘム類似体(Heme 2.0とも呼ばれる」が、プラントベースの市場を大きく変える可能性があり、「ゲームチェンジャー」とメディア「The Spoon」では表現されました。

プラントベースバーガー

そもそもヘム(Heme)とは

ヘムとは、血流中の酸素を結合するために必要なヘモグロビンの前駆物質(ヘモグロビンの前の段階)です。ヘムは骨髄と肝臓の両方で生合成されます。

抜粋引用:Wikipediaより

ということですが、一言でいうなら酸素を結合して、「血液」の赤色をつくっているタンパク質です。

血の赤色はヘモグロビン

このタンパク質のおかけで、肉を焼くときの肉の香り、食べたときの味わい、食感が作られていると言ってもよいでしょう。

 

大豆そら豆エンドウ豆を主原料にしたプラントベース代替肉には、動物の肉ようにヘムは含まれておらず、動物肉を食べたときの香りを十分に再現することができませんでした。

それをImpossible Foodsは、遺伝子組み換えをした酵母菌から作り出すことに成功。自社のプラントベース製品に使用。

そして「出血」するプラントベースの代替肉が注目を集めたのです。

レグヘモグロビン

Impossible Foodsが開発した「ヘム」は、動物に血に含まれる「ヘモグロビン」ではありません。

ヘムにはグループがあり、人や動物に血液に含まれる「ヘモグロビン」、筋肉で機能する「ミオグロビン」、マメ科の植物の根につくられる「レグヘモグロビン」。

ヘムグループの3種類出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Leghemoglobin 右からレグヘモグロビン、ヘモグロビン、ミオグロビン

この3つには機能的は似ており、酸素と結合する特性を持っています。

Impossible Foodsが注目したのはレグヘモグロビンです。

このレグヘモグロビンは、マメ科の植物の根につく根粒菌がアンモニアが作り出すときに、重要な働きをします。

根粒菌はマメ科の植物の根に根粒という膨らみをつくり、そこに住みつき植物と共生関係をつくる細菌。

 

中学生の理科の授業のような内容になってしまいますが、根粒菌は大気中の窒素を根粒のなかで固定し、アンモニアにして、宿主となっている植物に供給する役割があります。

そのときに根粒菌は、気体の窒素を固定するために、酵素「ニトロゲナーゼ」を作り、窒素をアンモニアにしようとします。

ですが、ニトロゲナーゼには、酸素があると効果を発揮できないという弱点があり、アンモニアをつくるために、酸素濃度を低下させてやらないといけません。

そこで、宿主なっているマメ科の植物はレグヘモグロビンを作りだし、根粒に貯めて、根粒菌の酵素「ニトロゲナーゼ」の働きが邪魔されないように、酸素をレグヘモグロビンに捉えさせ、低酸素状態を作りだします。

 

このレグヘモグロビンが酸素と結合すると、動物の血液のような赤い色となり、「肉のような風味やあと味」を作りだす原料となります。

このマメ科の植物のDNAを酵母菌に加えて、遺伝子操作した「酵母菌」からレグヘモグロビンを大量に作りだすことに成功したのがImpossible Foodsです。

 

遺伝子操作した酵母菌が生み出したヘムの安全性

Impossible Foodsは、大豆植物のレグヘモグロビンを作りだすDNAを、酵母細胞に組み込み、大豆レグヘモグロビン(ヘム)を作りだす遺伝子組み換え酵母菌を作りだしました。

この酵母菌をビールと同じように発酵させて、大豆レグヘモグロビン(ヘム)を生成します。

2019年、この大豆レグヘモグロビンアメリカ食品医薬品局(FDA)は、食品への添加を承認。

ですが、2021年1月に非営利組織Center for Food SafetyCFSによって、この承認に対して、起訴が起きています。

食品安全センターの科学政策アナリストのBill Freese(ビル・フリーズ)は、FDAは大豆レグヘモグロビンが、人の健康に悪影響を引き起こすか判断するために、必要な長期的動物研究を実施しせずに承認したというコメントをメディアにしました。

 

加えて、マウスを使った短期間の実験では,多くの潜在的な副作用が検出されたと説明しています。

ラット使った動物実験

具体的には、雌の生殖周期の乱れ子宮重量の減少貧血のバイオマーカー血液の凝固能力の低下腎臓の問題などです。しかし、この起訴は最終的にFDAによって拒否。

Impossible Foodsは製品に使用している大豆レグヘモグロビン(ヘム)は、食品添加に問題ないとしています。

しかし、長期的には人体に対してのなんらかの悪影響があるかについては、不確定であることは事実です。

 

オーガニックのスピルリナから抽出された非遺伝子組み換えのヘム

スピルリナ

Back of the Yards Algae Sciences (BYAS)はシカゴ拠点の藻類の可能性を研究している企業。

2018年に創設者Leonard Lerer(レオナルド・レラー)によって設立され、従業員はわずか6名という少人数で、藻類から着色料、うま味成分、たんぱく質の抽出などの開発を行っているスタートアップです。

 

製造販売している着色料製品は、栄養補助食品にも使えるほどの高品質を誇っています。

例えばBYAS の製造している着色料C501は、承認を受けた健康食品、飲料に使う用途で開発され、スピルリナから抽出されたフィコシアニンが豊富な天然の青色の着色料です。

BYASのレグヘモグロビン類似物(ヘム2.0)は、スピルリナを使用して色を紫色にするプロセスを研究しているときに発見。

偶然にも、スピルリナのレグヘモグロビンを分離することに成功。

このスピルリナのレグヘモグロビンの特徴には強い肉の香りがあるということです。

メディア「Food Ingredients First」にBYASのLeonard Lerer氏は、この分離できたヘムの類似物に関して以下のようなコメントを残しています。

他にも大部分が実験的なヘム類似体がいくつかあり、現在、世界市場に供給するのには十分な量が生産できるものはありません

 

このヘムを使い、味覚テスト実施。市場に出回っている2種類のプラントベースの代替肉製品(ビヨンドミート社とモーニングスター社)に低濃度のヘムを吹きかけました。

 

味覚テストに参加したメディア「The Spoon」の 記者Josh Schonwaldはヘムをスプレーした代替肉と、そのままの代替肉の違いについて以下のようにコメントしています。

簡単に調べてみると、ヘムをスプレーしたバージョンは、見た目や匂いに大きな違いはありませんでしたが、数回噛んだ後、私は明らかにお気に入りになりました。

私の好みの原因を特定するのは難しいです。

たぶん、ヘムフレーバーがビヨンドのナッツのような後味を覆い隠していたのでしょうか?

うま味の増加だったのでしょうか?

それが何であれ、ヘムをスプレーしたハンバーガーは明らかにアップグレードされました

On a quick inspection, the heme-sprayed versions didn’t look significantly different, or smell different, but after a few bites, I had a clear favorite.

It’s hard to pinpoint the source of my preference.

Maybe the heme-flavor overshadowed the nutty aftertaste of Beyond?

Perhaps it was an increase in umami?

Whatever it was, the heme-sprayed burgers were a clear upgrade.

一部抜粋引用:

 

プラントベース代替肉がより肉っぽく

オーガニック・スピルリナから抽出できるBYAヘムは、一般的に安全だと認められているアメリカ食品医薬品局のGRAS(安全基準合格証)の食品着色料の扱いということです。

そのため、食品添加物の規制上の大きな問題なく、年末までには市場の供給し、需要に対応できるようになると予想されています。

 

Leonard Lerer(レオナルド・レラー)はメディア「Food Ingredients First」の現在のヘムの生産状況について以下のようなコメントしています。

現在、生産ニーズを満たすのに十分な藻類を栽培していないため、世界中のサプライヤーから藻類を購入しています。

“We do not currently cultivate sufficient algae to meet our production needs, so we buy algae from suppliers all over the world.”

一部引用抜粋:

 

BYASは、ヘムの生産を拡大していると予想され、革新的なプラントベースの開発と生産をしている企業と協力して、ヘムのサプライヤーになることを目指すということです。

BYASヘムを市場に十分な量を供給できるようになると、Impossible Foodsの独占となっていた「出血する」プラントベース製品は、その優位性を失う可能性が高いでしょう。

そして、プラントベースのステーキや魚、その他のシーフードなどで「血のある」代替肉が当たり前となるでしょう。

そうなると、健康的で「肉らしい」プラントベースの代替肉が開発され、製品化されることになります。

 

参 考

企業HP

https://www.algaesciences.com/

https://www.centerforfoodsafety.org/

http://queensigem.ca/index.html

メディア情報

https://www.foodingredientsfirst.com/news/heme-20-spirulina-extract-challenges-impossible-foods-bleeding-hero-ingredient-in-plant-patties.html

https://www.centerforfoodsafety.org/press-releases/6256/lawsuit-challenging-fda-approval-of-novel-genetically-engineered-color-additive-that-makes-impossible-burger-bleed-moves-forward

https://www.greenqueen.com.hk/chicago-ingredients-startup-debuts-algae-heme-to-help-upgrade-plant-based-meats/

https://thespoon.tech/i-tried-a-new-rival-to-impossibles-heme-and-it-could-be-a-game-changer/

https://agfundernews.com/afn-introduces-singene-and-back-of-the-yards-algae-sciences.html

ヘムについて

http://queensigem.ca/plantprotein.html

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Junichi
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