- バイオリアクターと監視ソフトウェアのサービスとして提供しているスタートアップ
- 研究者は実験に立ち会わずとも、経過と結果をオンラインで把握できる
- バイオテクノロジーを使った製品を市場に流すまでの期間を短縮できる
バイオリアクターを借りる
フードテックで注目の集まる「細胞培養」「微生物発酵」。今後の食糧問題の解決策として期待が高いフードテックですが、これらの研究・開発には専用の機材と設備、多額の資金が必要。
特にバクテリア、菌類、細胞の実験、成長させるために必要なバイオリアクター(醸造槽)は規模拡大には欠かせない。その多額の先行投資が必要な設備をサービスとして提供しているスタートアップ企業Culture Biosciences。
彼らが提供するデジタルバイオ製造プラットフォームを使うことで、0から設備を揃えなくてバクテリアや菌類、細胞を大規模に同時並行に実験、成長させることができる。

スケールアップがネック
多くのバイオテクノロジーのスタートアップは基礎研究を小規模なラボで行い、次に実験のスケールアップの段階に入る。このときに自社で施設を建設するか、外部のラボと契約するかを選ぶことになる。しかし、どちらの選択肢も柔軟性、利便性、契約期間など制限が多い。

そのため基礎研究から市場へ出せるものができるまで5年を超えることも珍しくない。その間も開発・研究費が必要になる。
Culture Biosciencesは、この問題を解決するサービスを提供している。
クラウドバイオリアクター
2016年に設立され、サンフランシスコを拠点にするCulture Biosciencesは高価なバイオリアクターとそれを監視するソフトウェアを顧客に貸し出している。
利用したい企業は実験に使う菌や細胞をCulture Biosciencesに送り、オンラインで実験の状況を把握する。
そのサービスをForbesは「バイオテクノロジー業界のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のようなもの」と例えている。

Culture Biosciencesの側では管理しているバイオリアクターをコンピューターで把握。実験を実行、分析、監視できるプラットフォームを用意しており、顧客はその場にいなくとも、リアルタイムに実験の経過をオンラインで把握できる。
これにより一度に多くのバイオリアクターで実験でき、科学者は複数の研究を同時並行で実行することができる。そのため実験につかう時間の節約と製品化への実現が早期に可能となる。

創設者:Will Patrick
創設者のWill Patrickは機械工学のバックグラウンドを持ち、Googleのドローン配信サービス「Project Wing」プロジェクトに参加。この経験がCulture Biosciencesの立ち上げる元となったと語っている。

出典:https://www.culturebiosciences.com/
ドローン航空機と自動バイオリアクターは表面的にはかなり異なりますが、関連するテクノロジーには多くの共通点があります。
2020年4月にラウンドAの資金調達で1500万ドル(約15億円)の資金を集め、バイオリアクターの拡充と監視ソフトウェアの追加を行うとコメントを残している。
クライアントには遺伝子組み換え微生物の設計、研究、製造を行うZymergen社やコラーゲンタンパク質から構築されたブランド素材Zoa を生産するModernMeadowy社が利用している。
今後、自前で設備を揃えるより、クラウドバイオリアクターを利用し製品化までの期間を短縮するバイオ企業が増えると見込まれる。
参 考
https://www.nanalyze.com/2020/11/life-sciences-laboratory-automation/
https://thespoon.tech/building-bioreactors-with-will-patrick/
https://www.cytivalifesciences.co.jp/products/bioprocess-solutions/bps-bio-manufacturing-campus.html